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乙武洋匡氏 蹴り足、蹴った部位聞ける5人制サッカー

[ 2021年8月31日 05:30 ]

サッカーに挑戦した乙武氏
Photo By 提供写真

 【乙武洋匡 東京パラ 七転八起(7)】「見えているとしか思えない!」

 思わずそんな声をあげたくなるほど、5人制サッカーブラジル代表のプレーは圧巻だった。高速ドリブルで次々と相手を抜いていきシュートまで持ち込む姿には、その相手が日本代表であることを差し引いても惚(ほ)れ惚れするものがあった。

 私も以前に体験したことがある。アイマスクによって完全に視覚を奪われた状態で行うサッカーは、想像よりはるかに難易度が高くなる。ボールを思った方向に蹴ることだけは練習を重ねることでできるようになったものの、ボールを受けることができない。あとで撮影した動画を見てみると、ボールと私の体は数十センチもズレがあった。最も想定外だったのは恐怖心だ。前方からボールが飛んでくるだけでも不安なのに、視覚を奪われた状態で相手選手が迫ってくる感覚は、数カ月間の練習を重ねてもそう簡単に払拭(ふっしょく)できるものではないだろう。

 日本代表でキャプテンを務める川村怜選手にインタビューしたことがある。

 「非常に無防備な状態なので、僕も最初は怖かった。でも、レベルの高い選手ほど相手の位置や動きを察知していて、ケガをすることもないんです」

 彼らはシャカシャカと鳴るボールの音だけでなく、足音やユニホームがこすれる音、息づかいや風向きなど、視覚以外のあらゆる情報を駆使して空間認識に努めるのだという。

 音が重要であることは間違いないが、小さな音を聞き取る「聴力」と、音を聞き分ける「聴覚」は別物だという。

 「純粋な聴力は、僕も日本代表のチームメートも人並みなんです。ただ、僕らはボールを蹴った音だけで、蹴り足が右なのか左なのか、そして足のどの部位で蹴ったのかわかります」

 逆にボールを宙高く蹴り上げたり、一瞬ボールを止めたりすることで音を消し、相手をかく乱させるフェイントも駆使するのだという。

 異次元の戦いを見せてくれる5人制サッカー。しばらく目と耳を離せそうにない。

 ◇乙武 洋匡(おとたけ・ひろただ)1976年(昭51)4月6日生まれ、東京都出身の45歳。「先天性四肢切断」の障がいで幼少時から電動車椅子で生活。早大在学中の98年に「五体不満足」を発表。卒業後はスポーツライターとして活躍した。

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