【スポニチグランプリ新人賞】「許された子どもたち」上村侑 殺人犯演じた受験生「受賞は合格通知」

[ 2021年1月22日 05:30 ]

2020年(第75回)毎日映画コンクール各賞決定 ( 2021年1月21日 )

照れくさそうに笑顔を見せる上村侑(撮影・木村 揚輔)
Photo By スポニチ

 2020年(第75回)毎日映画コンクールの各賞が21日、決定した。銀幕にキラリと輝いた新星に贈られるスポニチグランプリ新人賞には「許された子どもたち」の上村侑(18)と「37セカンズ」の佳山明(26)が選ばれた。2人はそれぞれの言葉で飛躍を誓った。

 受賞を伝えられたのは昨年12月25日。「事務所に呼ばれて、何かの相談かなと思ってたら、受賞の証明書をスッと渡されて。実感はなかったんですけど、最高のクリスマスプレゼントでした」。ギョロっとした大きな瞳。目尻にシワをつくって上村ははにかんだ。

 内藤瑛亮監督がメガホンを取った対象作はエスカレートしたいじめの末に同級生を殺してしまった中学生の絆星(きら)と、その家族の生きざまを描いた作品。上村は内藤監督が開いたいじめについて考えるワークショップに参加し、主役に抜てきされた。

 初映画で初主演。しかも殺人犯という難役だが、そう思わせない骨太の演技だった。「演技をしようと思ってもできないので、とにかく絆星と体を共有しようと思って。監督とは“この時は悲しみが3、怒りが7ですよね?”と、感情の部分を互いに共有していました」と振り返った。

 目や表情で見せる無言の演技は圧巻。「台本には“…”と書かれたセリフが多く、監督に“この…はどういう意味ですか”ってしつこく聞いてました」。地獄へと落ちた絆星の心情を丁寧に表現することを心掛けた。

 母親や弁護士に誘導されて無罪を主張した絆星は、少年審判では裁かれなかった。だが世間は許さない。SNS上で実名でバッシングを受け、中学では犯罪者扱いを受ける。許されてしまったがゆえの苦悩と直面しながら、毎日を生きていく。

 撮影当時は自身も中学3年生。「ウソをつくことへの罪悪感や隠し事をする時の緊張感は自分にも分かる。絆星の気持ちは分かりたくないけど、分かるよなって。母親に聞くと、撮影当時が一番グレていたって。家に帰るなり、ただいまも言わずに部屋にこもって勝手に寝てて」と苦笑。それだけ役に体を預けていたのだろう。

 「どんな職業にもなれる」と目指した俳優の道。同級生は現在、大学受験の真っただ中だ。「今回の受賞は、僕にとっての合格通知。監督には“この映画を上村君の名刺代わりにして”と言ってもらった。ゴールではなく、スタートラインに立てたんだと思う」。合格通知と名刺を手に、役者の世界で新社会人として生きていく。(伊藤 尚平)

 ◆上村 侑(うえむら・ゆう)2002年(平14)11月2日生まれ、鹿児島県出身の18歳。中学2年時に俳優を志す。19年にフジテレビ系ドラマ「仮面同窓会」に出演。趣味は将棋や囲碁で「体よりも頭を使うゲームが好き」。1メートル74。

続きを表示

この記事のフォト

2021年1月22日のニュース