“劣勢逆転”豊島竜王の執念を見た──久保九段分析、両局とも「ペースは広瀬八段だった」

[ 2020年10月17日 05:30 ]

第70期王将戦 挑戦者決定リーグ

終局は16日0時44分、死闘を制した豊島将之竜王(奥)。右手前は広瀬章人八段(撮影・我満 晴朗)
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 将棋の第70期王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負で渡辺明王将(36)の対戦者を決める挑戦者決定リーグは15日、東京都渋谷区の将棋会館で豊島将之竜王(30)=叡王との2冠=―広瀬章人八段(33)戦の対局を行い、持将棋(引き分け)指し直しの末に豊島が勝って3連勝とした。200手で持将棋が成立後、指し直し局も126手を要し、終局は16日午前0時44分。対局開始から延べ14時間44分の長い一日を、元王将の久保利明九段(45)が解説した。

 「最初の将棋、指し直し局もペースは広瀬八段でした。逆転は、7番勝負出場に懸ける気持ちの表れでしょう」。豊島2勝、広瀬1勝で迎えた無敗対決を制した、豊島の精神力を久保九段は称えた。

 豊島は8月、名人を渡辺明王将に奪われたが先月叡王を獲得し2冠に返り咲いた。ところが王将戦では過去2度挑戦し、2勝4敗で敗退。いずれも久保が相手だった。

 指し直し局の分岐点に挙げたのが116手目、豊島が△6五桂(第1図)と打った局面。広瀬は▲6九桂と受けたが「▲8八角なら勝ちでした」。自陣の争点になっている7七への効きを足し、射程にある6六金を入手できれば▲5一金からの詰みがあった。

 「一時豊島竜王が良くなったが全体的に広瀬八段ペースで、最後に広瀬八段が誤った。将棋は最後に間違った方が負けです」

 2局とも「内容は広瀬、勝負は豊島」の印象。最初の将棋は持将棋となる24点を豊島が獲得できるかどうかが焦点だった。194手目、端歩を馬で取られて23点に陥った豊島だが直後、敵陣に金を打ちつけて広瀬王が逃れる間に銀を捕獲した。終局直前の197手目だった。

 「(豊島王が)寄せられると思って見ていた」そうで、入王できたとしても「(豊島は点数が)足りないと思っていた。流れとしては“逃げ切った”将棋でした」

 対局開始11時間後に確定した引き分け。「優勢な方が仕留め損になったから持将棋になる。切り替えてやるしかない」。続く指し直し局の土壇場で、その流れが影響した可能性もありそうだ。

 昨年失った王将以来のタイトル戦だった王座戦5番勝負に2勝3敗で敗れ、山梨県甲府市からの帰途、豊島―広瀬戦の中継に見入った。久保にも1999年の順位戦で千日手2局の末、計3局指して翌朝4時55分、終局した一戦を制した経験があった。感想戦後、帰宅したのは午前8時だった。当時24歳。「“もう一丁こい”の気持ちでした。若い2人なら何てことない」。豊島が3連勝としたことで「かなり確率は高い」と3度目の挑戦権獲得を有力視した。

 ▽持将棋 お互いの王が敵陣の3段目まで進出し、詰ませたりもう駒を取れる見込みがなくなったときに持将棋となり駒の枚数を数える。王を除いた盤上の駒と持ち駒を飛車角5点、それ以外を1点として計算し、両者24点以上あれば引き分けとして再試合となる。24点に満たなければ、満たない方が負けになる。

 《豊島VS広瀬VTR》先手の豊島は雁木を採用したが「失敗してしまった感じ」で自王の守りが薄くなり、入王に作戦変更。広瀬の追撃から逃げ切ると点数勝ちを目指し飛車獲得に動きつつ、小駒を確保して24点に到達。200手で持将棋を成立させた。過去には今期の叡王戦7番勝負第2、3局で永瀬拓矢叡王(当時)相手に持将棋を経験。いずれも不利な状況から追いついたもので、シリーズも4勝3敗で制している。

 先後を入れ替え、午後9時27分に始まった指し直し局では、形勢が何度も入れ替わる難解な中盤戦を経て突入した最終盤、選択ミスの応酬となった大混戦を最後は豊島が抜け出して126手での勝利を収めた。終局は16日0時44分。持将棋局開始から計70分の休憩を挟み、14時間44分かけての決着だった。

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