舞台上で輝き続ける平田満 映画、ドラマでも活躍 つかさんの言葉が役者人生の指針
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【俺の顔】俳優の平田満(66)は故つかこうへい氏(享年62)の薫陶を受け、その教えが役者人生の指針になっている。「舞台に出られなくなったら、この仕事もそこまで」と舞台人を自任しつつ映画、ドラマと活躍の幅は広い。いまだに悩みは尽きない。苦しい、つらい時もある。それでも、つか氏の稽古場で得た「芝居が楽しい」という感覚を持ち続けるからこそ、輝きは色あせない。(鈴木 元)
「今振り返れば、よく役者をやってこられたと思いますよ。演技プランなどを考えたことがないし、計画が全くないままいつまでできるか分からないけれどやってみようという感じでここまで来ちゃった。その場でやっては忘れて、またスタートラインからという繰り返しでした」
自嘲交じりの笑みを浮かべ、謙虚に述懐する。充実したキャリアからは意外に感じるが、役者としての原点も決して能動的ではなかった。将来の目標を見つけようと入った大学で、たまたま入った演劇サークルが始まりだ。
「向いていない、辞めようと思って夏休みに部長に連絡をしたら、“秋につかこうへいさんの芝居をやるので稽古に入っている”と言われ、そのままだまされるように稽古に入ってしまった感じです」
芝居に関しては全くの素人。当然、つか氏のことも知らない。その指導に右往左往しながらも、これまでにはなかった気持ちが芽生え始める。
「つかさんの演出は“出ろ、やれ”くらいで、何をということすらもなかった。大変なんですけれど、分からないなりに本質的なことを求めているんだと何となく思ったんです。人前で恥ずかしくても何かをやってみせる楽しさというのは、つかさんの稽古で教わった気がします」
バイト中でも、稽古の招集がかかればすぐにやめて駆け付け、芝居に打ち込む。そして、つか氏の小説を映画化した82年「蒲田行進曲」が大きな転機となる。舞台版にも出演していたが、その時とは違う主要キャストの大部屋俳優・村岡安次(ヤス)役への抜てき。つか氏からは「おまえと風間(杜夫)で映画をやるから」の一言だけだった。当時は俳優が演劇と映像を往来することが少なかった時代。クライマックスの階段落ちはもちろん、とにかく体当たりで臨むしかなかった。「芝居自体は知っているし、深作欣二監督からも舞台と同じようにやればいいということだったので、これはダメ、あれはダメと言われたことはなかったですが、その代わりリテークは多かった。体力だけはありましたから、10回でも20回でもやりました。最初で最後の映画くらいの気持ちだったので、深作監督や松坂慶子さん、仲間と一緒に撮れただけで幸せだと思っていました」
映画は大ヒットし、平田もキネマ旬報ベスト・テン助演男優賞などを受賞。注目されるとともに映像の仕事も格段に増えていった。「台本に名前があるような役で出られるようになって、今までやっていられるのもそのおかげだと思います。つかさんが常に先頭で引っ張ってくださったので、その後を付いていったのが正確なところ。自分がこうしたいというよりは、いきなり運命がやってくるような感じです」
だが、本拠地である舞台は常に念頭にある。06年に妻で女優の井上加奈子(67)と企画・プロデュースの共同体「アル☆カンパニー」を設立。さまざまなスタイルで定期的に公演を開いている。「たまたまスペースがあって、かみさんの知り合いの詩人の詩が面白いから朗読ならできるかもしれないからやってみようと始めて、方向性のないまま今に至ります。最初は単純に、小さいところで汗や唾が飛び散る現場で、ウソのない芝居がしたいということだけでした」
15年には「熱海殺人事件」の再演で33年ぶりに風間とコンビを組み新米刑事の熊田を演じた。時を経ても同じ役ができる。これも演劇の醍醐味(だいごみ)だ。「60歳を過ぎて20代にやっていた役をやれば、批判なり嘲笑されたりすると思いますが、中にはそんなにこの役が好きなんだ、いいじゃないかという人もいてくれると思うんです。いまだどこかに恥ずかしさはありますが僕らが裸一貫で出ることでちょっとした感動を伝えられる喜びはありますね」
つか氏の作品群は後輩たちによって綿々と受け継がれており、「僕ら既成の俳優より、これからの人がつかさんの言葉と出合って何かを見つけてくれるのが一番いい」と相好を崩す。自身も若手の芝居に刺激を受けることは多いという。だからこそ「常に新鮮でありたい」という思いを胸に、新たなスタートラインに立ち続ける。
≪コスプレも挑戦「楽しかった」 10.2公開「浅田家!」≫平田が出演する映画「浅田家!」(監督中野量太)が、10月2日に公開される。「家族でやってみたいこと」をテーマにした浅田政志氏(41)の写真集を原案にしたホームドラマで、浅田氏がモデルの次男・政志(二宮和也)にカメラを教える父・章を演じた=写真。劇中では消防士、レーサーなどさまざまなコスプレも披露し、「とてもユニークな写真集、家族で、脚本からほのぼのとした何かが伝わってくる感じを受けました。中野監督の作品の肌合いも好きだったので、やりたいという気が増しました。現場も凄いエネルギーと時間をかけていて、楽しかったですよ」と満足げな笑顔を見せた。
◆平田 満(ひらた・みつる)1953年(昭28)11月2日生まれ、愛知県出身の66歳。早大在学中につかこうへい氏と出会い74年、劇団「つかこうへい事務所」の旗揚げに参加。82年「蒲田行進曲」で数多くの映画賞を受賞。01年、「ART」などで読売演劇大賞最優秀男優賞、14年「失望のむこうがわ」などで紀伊国屋演劇賞個人賞を受賞した。21年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」に出演。
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