林遣都 中江功監督のマンツーマン演出「財産」初タッグ「教場」現場に感銘「誰に対しても愛情」

[ 2020年6月6日 08:00 ]

“ソーシャルディスタンスドラマ”「世界は3で出来ている」に主演し、1人3役に初挑戦する林遣都(C)フジテレビ
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 俳優の林遣都(29)が今月11日に放送されるフジテレビの単発ドラマ「世界は3で出来ている」(後11・00~11・40)に主演し、1人3役に初挑戦。今作唯一の出演者で、緊急事態宣言解除後に再会した一卵性三つ子を演じる。フジテレビ開局60周年特別企画「教場」(今年1月4~5日)と今年3月まで放送されたNHK連続テレビ小説「スカーレット」、別々にドラマを作った演出・中江功監督(56)&脚本・水橋文美江氏(56)夫妻と今回は“トライアングルタッグ”。撮影を終えた林が名匠・中江監督の演出について語った。

 同局は今作を「リモートドラマ」には括らず、オンライン会議と“3密”を避けるなど安心安全な撮影を徹底した「ソーシャルディスタンスドラマ」と命名した。

 林が演じるのは商事会社勤務・望月勇人、会計士・望月泰斗、茨城在住の農園経営・望月三雄。29歳の一卵性三つ子だ。勇人は子供の頃から明るく、すべてノリで生きてきたお調子者。今の会社も亡き父のコネで入ったのだが、入社して早7年。さすがに仕事はノリやコネだけで乗り切れず、自他ともに認めるポンコツ、落ちこぼれのサラリーマン。会社を辞めたいとさえ思っていたところ、今回の緊急事態宣言。テレワークやオンライン会議など仕事環境が一変したこの3カ月で、勇人は一体どうなったのか。宣言が解除されたある日、勇人を案じた兄・泰斗と弟・三雄が勇人を訪ね…という展開。

 林は中江監督が演出を手掛けた「教場」で警察学校の生徒の1人・平田和道、水橋氏が脚本を執筆した「スカーレット」でヒロイン・川原喜美子(戸田恵梨香)を支える幼なじみ・大野信作を好演。「昨年から今年にかけて(『スカーレット』の)脚本の水橋さんと(『教場』の)演出の中江さん、このお二人との出会いは自分の中での大きな出来事でした。もっと水橋さんの描く人間を演じたいと思いましたし、中江組をもっと経験したい、またいつか参加したいという気持ちがあったので、まさかそのお二人で、しかも出演者が自分だけという形で、声を掛けていただけたというのは、とてもうれしかったです」とオファーに感激した。

 1人3役の演じ分けについては「三つ子という設定には最初驚きましたけれど…とても難しいだろうし、かなり挑戦的な企画だなと思いましたが、やり甲斐を感じました。演じ方によって、出来上がるものが全く変わってくるなって感じたので、1つ1つ台本を読みながら膨らませていきました。でも、自分が三つ子を、3人分を演じるので、同じ顔はどうしようもない。撮影期間も短く、入れ替わりながら撮っていく中で、とにかく1人1人気持ちを込めて演じていくことを軸に置きました。見てくださっている人に、掛け合いや空気感で、だんだんそこにいる3人が何となく、気が付いたら別人に見えていたらいいなと。精いっぱい自分の心を込めて演じることで、どこまでできるかなって」とプラン。

 実際は「(3役を)入れ替わりながら演じていくのは、僕自身も混乱しました」としながらも「台本ができてから撮影までの限られた時間で、自分がどこまで膨らませられるかということが勝負だと思っていました。今回の企画で、映像作品のスペシャリストの方たちと一緒にお仕事できたということの喜びの方が大きく、とにかく楽しかったです。あとは自分がどこまで突き詰めていけたか?というところです」と貴重な時間になったと振り返った。

 「愛という名のもとに」「この世の果て」「ピュア」「眠れる森」「空から降る一億の星」「プライド」「Dr.コト―診療所」など数々の名作・ヒット作を生んだ名匠・中江監督とは「昨年『教場』で初めてご一緒して、感銘を受けたというか…当時も話していたのですが、中江組の雰囲気、演出…映像作品の現場って、こうでないと、と思うことが多々ありました」と回想。

 「今回も、それをより強く感じました。もの凄い分量と大変な撮影を短い時間で皆さんされていて。そんな現場が自分にとって凄くプラスで、こういう監督の下でもっと演じるべきだなと改めて思い知らされました。今回、自分なりに準備はしましたが、中江監督が『さあ、どう演じるの?』っていう感じで、どれだけ大変な状況でも俳優力が試されているというか、撮影中にセリフや芝居で失敗しそうになった時に『中江監督の下で育った役者さんは、たぶんこんなの当たり前にやるんだろうな』っていうのが、凄く自分の中にはあったんです。それがあるので、自分もどこまででも頑張れるというか、やればやるほど結果や出来上がりが変わってくるんだなっていうのは感じています。今までなかなか出会えなかったタイプの監督さんなんです。『教場』の時に印象的だったのは、大勢のキャストやスタッフの方々がいたのですが、誰に対しても分け隔てなく愛情を持って接してくださる…とにかく人柄が素敵な方なので、今回、出演者が1人で、これだけマンツーマンで演出していただけるというのは今後の自分の財産になると思いますし、大きな作品になりました」

 プロデュースも兼ねる中江監督は「今回の予期せぬ状況下においても知恵と工夫を凝らし、さまざまなリモートによるドラマ作品が生み出されてきました。それらに取り組まれた方々の志、思いに感銘を受けたのが始まりです。“今だから”というよりは“これから”を念頭に、『緊急事態宣言』解除後の“新しい生活様式”“ソーシャルディスタンス”を守った上で、どうすれば脚本に描かれた世界を撮影できるかを考えました。ジェームズ・キャメロンのようにウイルス対策が功を奏したニュージーランドで撮影するか、トム・クルーズのようにISS(国際宇宙ステーション)で撮影するか、林遣都さんに3役やっていただくか、の3択で、林さん3役を選びました」と企画意図を説明。「彼以外に考えられないので、断られたらこの企画はなかったことにしようと思っていました。引き受けていただいて感謝しています」と林のキャスティングありきの作品だと明かした。

 中江監督の思いに、林は「あんなにうれしい言葉はないです。でも、プレッシャーでもあります」と感謝。今作を通じ「改めて、役者って1人じゃ何もできないんだなと思いましたし、実際にこうして撮影に入ってみても、皆さん(スタッフ・キャスト)が集まって初めて1つの映像作品が生まれるんだということを感じました。これからも撮影環境は変わっていくとは思いますが、今、自分ができることをやっていきたいなと思いました」と“原点回帰”したようだった。

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