「なつぞら」草刈正雄 素顔は意外?「イジイジ」涙誘う名演の裏側 泰樹や“真田丸”昌幸は真逆の醍醐味

[ 2019年5月3日 05:00 ]

草刈正雄インタビュー

連続テレビ小説「なつぞら」で圧倒的な存在感を示している草刈正雄(C)NHK
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 俳優の草刈正雄(66)がNHK連続テレビ小説「なつぞら」(月~土曜前8・00)にレギュラー出演。戦災孤児のヒロインを導く頑固じいさん・柴田泰樹を熱演し、ヒロインの子役時代は圧倒的な存在感で視聴者の涙を大いに誘った。自身も脚本を読み「自分のシーンに限らず、しょっちゅう泣いています」という。泰樹は、草刈が2016年の大河ドラマ「真田丸」で演じた天才武将・真田昌幸に通じる“器の大きい男”だが「僕とは真逆。僕はイジイジしています(笑)」と意外な(?)素顔を打ち明けた。

 女優の広瀬すず(20)がヒロインを務める節目の朝ドラ通算100作目。大河ドラマ「風林火山」や「64」「精霊の守り人」「フランケンシュタインの恋」、映画「39 刑法第三十九条」「風が強く吹いている」などで知られる脚本家の大森寿美男氏(51)が03年後期「てるてる家族」以来となる朝ドラ2作目を手掛けるオリジナル作品。戦争で両親を亡くし、北海道・十勝の酪農家に引き取られた少女・奥原なつ(広瀬)が、高校卒業後に上京してアニメーターとして瑞々しい感性を発揮していく姿を描く。

 草刈の朝ドラ出演は1995年後期「走らんか!」、00年前期「私の青空」以来19年ぶり3回目。今回演じる泰樹は明治35年(1902年)、18歳の時に1人で十勝に入植。荒れ地を切り開き、稲作を試すが根付かず、酪農を始める。妻が病死した後、男手一つで富士子(松嶋菜々子)を育て上げた。偏屈で頑固な性格だが、深い愛を持った大樹のような男。なつに人生を生き抜く術を教え込む。

 その風貌や話し方を見ると、草刈が熱演した「真田丸」の真田昌幸が否応なしに彷彿、連想される。昌幸は主人公・真田信繁(堺雅人)の父。知略軍略に優れた。草刈は戦国時代を楽しむかのような豪快なラテン系キャラクターを体現し、ドラマ前半のMVPと称賛された。

 乳業メーカーへの牛乳の卸し方をめぐり、泰樹と農協に勤める剛男(藤木直人)が対立。第15話(17日)には、2人を心配したなつに対し、泰樹が「あいつ(剛男)に頼まれたのか。組合(農協)はおまえを使って、わしを調略するつもりか。あいつに言っておけ。わしの牛乳は農協には絶対売らんと。なつに言っても無駄だと」と静かな怒りを示した。「調略」というセリフに、インターネット上は話題沸騰。「真田丸」第8話の副題が「調略」で、昌幸は上杉景勝(遠藤憲一)の家臣・春日信達(前川泰之)を調略した。

 チーフの木村隆文氏をはじめ、田中正氏、渡辺哲也氏と「なつぞら」演出4人のうち、3人が「真田丸」と同じ。脚本の大森氏や演出から「真田丸みたいに」といった注文は「全くありません。大森さんの本を読んだら『これ、昌幸の生まれ変わりじゃん』と分かりますからね(笑)。僕もそういうつもりで昌幸に寄せに行く部分もありますし、ただただ楽しんで演じています」と役作りの一端を明かした。

 「真田丸」と昌幸については16年8月、青森県で番組関連イベントに出席した際に「俳優人生ナンバーワンの作品、一番最高の役」と語ったほどの思い入れ。「あれがあったおかげで、今回につながったわけですから」と再び感謝。「真田の時もそうだったんですが、今回も同じように思い切り楽しんで演じれば大丈夫だと思っています」と“楽しむ”というワードを掲げた。

 第1週「なつよ、ここが十勝だ」(4月1~6日)、第2週「なつよ、夢の扉を開け」(8~13日)は9歳のなつ(粟野咲莉)を描いた。第4話(4日)は、なつが泰樹に連れられて帯広の菓子屋・雪月へ。アイスクリームを食べながら、泰樹が「一番悪いのは、人が何とかしてくれると思って生きることじゃ。人は人をアテにする者を助けたりはせん。逆に自分の力を信じて働いていれば、きっと誰かが助けてくれるのだ」と現代にも通じる労働哲学を静かに語り掛けた。第9話(10日)は、東京にいる兄・咲太郎(渡邉蒼)に会いたいと家を飛び出したなつを帯広の河原で見つけた泰樹が「おまえにはもう、側に家族はおらん。だが、ワシらがおる。一緒におる」と抱き締めた。

 号泣する視聴者が相次いだが、草刈は「いいセリフを頂き、ありがたい限り。歳も歳になり、そういう役回りが来て、大事な役を頂いたと思っています。大森さんがいい本を書いてくださるので、自分のシーンに限らず、しょっちゅう泣いています。僕も歳を取って泣き虫になりました。だから、あまり余計なことは考えず、その素直な気持ちを芝居で表現できたらと思っています」と初の大森脚本にストレートに向き合っている。

 絶大な存在感でドラマを牽引しているが「(泰樹は)僕とは真逆の人間。僕はイジイジして、本当にどうしようもない。器量のデカい男の人に憧れるんです」と笑いを誘いながら、素顔を告白。「(「真田丸」の)昌幸の豪快さも僕とは真逆。自分はそういうヤツじゃないので、芝居として演じられるのは楽しいし、真逆の方が僕にとってはおもしろい」と自身と正反対のキャラクターを演じる醍醐味を語った。

 「なつぞら」の序盤は「家族」がテーマ。TBS「ほんとうに」(1976~77年)や同「家族」(77~78年)など「僕は若い時に(「渡る世間は鬼ばかり」などのプロデューサー)石井ふく子さんのホームドラマによくやらせていただいたんですが、キャストが本当の家族のようになっていく様がおもしろいんですよね。今回も、ふと昔のことを思い出したりしながら演じています」。柴田家の食卓のシーンもテンポがいいが「長くやっていると会話も自然になるし、みんな生き生きしてきて、おもしろい。今回も貴重な経験をさせていただいています」と充実ぶりを語った。

 「今は1クール(3カ月)ですが、昔のドラマは最低でも半年。3カ月だと、そろそろ役に入り込めるかという時にバイバイしないといけないのが、ちょっと残念。NHKにもいろいろなドラマがありますが、朝ドラは半年、大河は1年。それが体験できるというのは、役者にとっては本当にありがたいことなんです」。大河「真田丸」に続き、朝ドラ「なつぞら」も草刈の代表作の1つになりそうだ。

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