「葛飾ふとめ・ぎょろめ」北斎魅力伝える初の“学芸人” 結成は無茶ぶりから…

[ 2018年8月25日 09:30 ]

北斎の魅力を伝える“学芸人”の葛飾ふとめ(左)とぎょろめ
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 お笑い芸人でもなく、博物館などの専門職の学芸員でもない。来年、没後170年の節目の年を迎える江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の魅力を楽しく伝える、日本初の“学芸人”として活動する2人組が「葛飾ふとめ・ぎょろめ(ともに年齢非公表)」。知っているようで実はよく知られていない希代の絵師の生涯や人柄。本業の舞台で培った表現力を生かし、コントや漫才、歌や踊りなどで「北斎の世界へといざないたい」と意気込む。

 2016年11月に東京・墨田区にオープンした「すみだ北斎美術館」。2人が所属する事務所の会長が同美術館のPRに携わっていたことが、ユニット誕生のきっかけになった。

 【ぎょろめ】会長が北斎の本や資料を並べて“美術館を盛り上げるためにネタを作れ!”って。その一言で、キャンギャルとして結成しました(笑い)。ヒーヒー言いながら一夜漬けして勉強したんですけど、知れば知るほどキャラクターが強くて、面白エピソードが盛りだくさんというのが分かって…。

 【ふとめ】会長の無茶ぶりからのスタートでしたね。でもこんな機会はないので、ぜひやってみたいなと。

 「モナリザ」に並ぶ世界的名画とされる「神奈川沖浪裏」や「赤富士」こと「凱風快晴」を含めた「富嶽三十六景」などの作品は日本はもちろん海外でも有名だが、その生涯や人となりについて触れる機会がなかった。偉大な芸術家ながら人間くささも漂い、次第に魅力にはまっていったという。

 【ぎょろめ】人にあいさつするのがめんどうだから、人とすれ違っても“南無阿弥陀仏”って手を合わせてスルーしたり、猫一匹が描けなくで泣いたり。偉人伝がまるまるネタ帳になるくらい。私は多摩美術大出身で、美術史の偉大な人物として知っていましたが、そんな人が身近でおもろいおっちゃんになっていって。そしてあらためて絵を見るとすごい。そのギャップもたまらないんです。

 【ふとめ】創作以外に関心がなく、身なりにも無頓着で、住んでいるところはごみ部屋。私の部屋もごみだらけなので、私も絵が描ければ北斎だなって。世界の人がリスペクトする人物なのに身近に感じて、こんな面白い人がいたんだよっていうのを伝えたい気持ちが大きくなっていきました。

 ともに中学時代から演劇部に所属し、女優の道を志してきた。それでも今は学芸人として、浮世絵のマメ知識や北斎の逸話をネタとして面白おかしく披露したり、体操にして紹介したり、北斎の52の画号(絵を描くときの名前)を時系列につないで歌にしたり…。当初の思いとは違う活動を続けている。

 【ふとめ】女優への思いを封印しているわけではないんです。人前に出たかったので“これはチャンスじゃないか”と。やってみたら大変でしたけど。ネタを考えて見てもらうことは楽しいですし、ふなっしーが2時間ドラマの主演を演じていたので、(本名ではなく)「葛飾ふとめ・ぎょろめ」として演じることができるではと虎視眈々と狙ってます(笑い)。

 【ぎょろめ】北斎芸人、北斎歌手として活動の場を広げているので、いずれ北斎女優として活動できるのではないかと。オファー、お待ちしてしております。

 北斎は来年没後170年を迎え、今後さまざまなイベントが控えている。来月には、晩年に往復した墨田区から長野県小布施町まで250キロを歩く巡礼世界大会が開かれるが、2人はこの「北斎巡礼」のキャンペーンガールも務める。北斎を顕彰するために立ち上げた「北斎サミットジャパン委員会」の委員長を務めるノンフィクションライターの神山典士氏は、2020年の東京五輪・パラリピックを見据えた上で、北斎は「海外に発信していく日本文化の中でも重要なコンテンツ」。まずは作品を見て、知ってもらうことが大事だといい「その強烈なグラフィックパワーは、人を引き付けてくれるはず。(来月の)巡礼も、四国のお遍路のようになればいいし、そういうムーブメントが起きつつある中で、2人には語ったり、演じてもらったりして頑張ってほしい」と期待を寄せる。

 【ふとめ】ゆくゆくは、全国そして世界の美術館を中心にPR活動ができる学芸人になれたらいいという野望もあります。北斎にはそれだけアートの力がありますから。

 【ぎょろめ】89歳まで生きた北斎。純粋に絵を楽しめることはもちろん、長寿の秘訣や老後生活など、現代社会に引っ掛かる部分もあって、全世代に通用する魅力がある。世界へ発信するためにもフランス語など外国語も勉強中で、ジャンルを越えて一層精力的に活動します。

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