豊島八段 羽生破り新棋聖 8人で8タイトルの“戦国時代”突入

[ 2018年7月18日 05:30 ]

初の棋聖位に花束と直筆の色紙を手に笑顔を見せる豊島将之八段(撮影・近藤 大暉)
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 将棋の棋聖戦の最終第5局が17日、東京都千代田区で行われ、挑戦者の豊島将之八段(28)が108手で羽生善治棋聖(47)を破り、3勝2敗で棋聖位を獲得した。タイトル戦5回目の挑戦で、待望の初戴冠。羽生は竜王の1冠に後退し、将棋界は8タイトルを8人の棋士が分け合う“戦国時代”に突入した。羽生は棋聖戦の連覇が10で止まり、史上初のタイトル通算100期獲得はお預けとなった。

 笑顔を求めるカメラマンの要請に精いっぱい応えようとしても、新王者はぎこちないままだった。

 「まだ実感がない。タイトル初挑戦から長かったが、諦めずにいて良かったと思う」。一言一言をかみしめるように思いを語る。4度にわたってはじき返された高く厚い壁をついに乗り越えた。あまりのうれしさに表情をつくることさえできない。

 プロ入り11年、28歳にして初めて獲得したタイトル。昨年末に永世7冠の資格を得た棋界の第一人者・羽生を倒しての快挙に「現実ではないような気がする」と夢見心地の心境を明かしながらも「自分の実力は少しずつ上がっていると思う」と自信も口にした。

 20歳で初めてタイトル戦(王将戦)に出場した当時は若手のホープ筆頭格。逸材と言われていたが、久保利明王将の前に2勝4敗で屈した後、今冬の王将戦までタイトル戦4連敗。さすがに「苦しかった」と振り返る。この間、名人、王位、王座、叡王と20代の棋士が次々とタイトルを奪っていく。それでも「心は折れなかった。自分にできることをやっていくしかない」と自らを奮い立たせた精神力がついに実った。

 棋聖奪取と同時に、将棋界全8タイトルが全て異なる棋士で構成される現象が実現した。7タイトル時代だった1987年(昭62)以来の乱世には「高いレベルで力が拮抗(きっこう)している。タイトルを獲っても気持ちを新たに頑張りたい」。少年の面影を残している遅れてきた大物が武骨な武将へと成長していく記念すべき一日だった。

 ◆豊島 将之(とよしま・まさゆき)1990年(平2)4月30日生まれ、愛知県一宮市出身の28歳。桐山清澄九段門下。07年に16歳でプロ入りし、平成生まれ初の棋士に。17年八段昇段。タイトル戦登場は現在進行中の王位戦含め6度、ほか16年JTプロ公式戦優勝。順位戦A級、竜王戦1組在籍。血液型B。

 ≪警報音で一時避難≫この日の午前10時45分頃、対局場に突然警報音が流れた。羽生は離席中だったが、場内にいた豊島と記録係は一時“避難”。結局誤報と判明し、2分ほどで対局再開した。「ビックリしました。とりあえず廊下までは逃げたんですが」と豊島は苦笑い。ハプニングを乗り越えての勝利だった。

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