舞台「アンフェアな月」小説の登場人物を“生きた人間”にする妙味

舞台「アンフェアな月」出演者インタビュー２

舞台「アンフェアな月」に出演する（左から）岡田達也、染谷俊之、飯田基祐
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　女優の篠田麻里子（３１）の初主演舞台「アンフェアな月」が２２日に東京・天王洲銀河劇場で開幕する。作品内で重要な役割を担う俳優の染谷俊之（３０）、岡田達也（５０）、飯田基祐（５１）がインタビューに応じ、作品の見どころや役への思いについて語った。

　風変わりな女性刑事・雪平夏見の活躍を描いた秦建日子氏の人気小説「アンフェアな月」の舞台化。生後３カ月の赤ちゃんの誘拐事件が題材。なぜか８時間後に通報してきた母親、身代金を要求しない奇妙な犯人からの電話など不合理な状況が多々起きる中、刑事雪平が解決に挑んでいく。染谷は雪平の相棒・安藤一之、岡田は特殊班課長の林堂航（りんどう・わたる）、飯田は捜査一課長の山路徹夫を演じる。

――役柄についての思いやご自身の解釈を教えてください。

【染谷】　僕が演じる安藤一之という役は、篠田さんが演じる主人公・雪平夏見に恋をしている刑事です。コンビを組んでいて雪平にいつも振り回されますが、安藤は仕事が全くできない若手ではなく、相棒として使える部分があるキャラクターだなと思います。この作品は重いテーマを扱っていて、パッと明るい場面が少ないので、安藤と雪平が絡む部分は息抜きといいますか、明るくできる場面になるのではと思いました。安藤が劇中でいいスパイスになればなと思います。

――岡田さんはいかがですか？

【岡田】　「アンフェアな月」だけではなく雪平夏見シリーズを全部読むと、林堂航は凄く面白い役です。最初は完全に雪平と敵対していますが、３作あとにはチームを組んでいる。凄くいい関係になっている。雪平の印象は最悪だけど、事件を解決するには雪平の力が必要だとわかっている。雪平にとっての林堂は敵役であり、壁である人ですが、意見は違えど犯人を逮捕するという最終目的地は一緒な２人ですので、良きライバルなのかなと思います。実力も認めざるをえないですからね。林堂自身もキレ者ですので。

――飯田さんはいかがですか？

【飯田】　小説と舞台は表現の仕方が異なりますが、舞台の上での山路徹夫を表現できたらいいなと思います。台本を読んで自分なりに役のイメージを考えてから、稽古場で（脚本・演出を手掛ける）菅野臣太朗さんとお話をしたり、稽古中に“こうかな”“こうした方がいいかな”と考えたりしています。小説を読んでイメージしていた山路とは違った質感の人間になるかなと思います。本番に向けて現在進行形で役をつくっています。

――作品はフィクションですが、舞台ですので登場人物が“生きた人間”として存在するための役作りなのですね。

【飯田】　はい。劇場の空間や、お客さんがいらっしゃるときのムードでも演じる登場人物の雰囲気が違って見えたりしますので、開演後も役作りについて考えますね。舞台上では染谷くん演じる安藤が笑いもしっかりととってくれると思いますので（笑）

【染谷】　演技だけじゃない部分でのハードルが凄く上がっているじゃないですか！（一同爆笑）

【岡田】　染谷くんが大変なことになってる（笑）。真面目な話に戻りますが、上手い役者さんの中には、舞台の公演期間中に役を変化、進化させる方がいます。公演序盤にお客さんの反応を見て“この場面はもう少し声を抑えた方が伝わるんじゃないか”と改良していきます。

――それぞれが演じる役柄のセリフや演技で“主人公・雪平夏見はどんな人物なのか”と表現するような場面があります。それぞれの役柄と雪平との関係をどのように捉えていらっしゃいますか？

【飯田】　警察組織の中で数少ない雪平の味方かなと思いますが、雪平は厄介な存在。雪平自身の正義というものがあるけど、一般社会や組織という場の中ではなじめない人だと思います。検挙率ナンバーワンで有能だけど、厄介な人物だという矛盾がある。

【染谷】　雪平は林堂や山路には“バカかお前は”とは言いませんが、安藤に対しては言ってしまう。安藤とのやりとりでは雪平の人間らしい部分が出る場面があります。安藤という役柄を通じて雪平の人間味ある部分をうまく見せることができたらいいなと考えてます。

【岡田】　検挙率が凄まじいけど、家庭は崩壊し酒にも酔いつぶれるダメダメな部分もある魅力あふれる人物です。原作が小説のキャラクターですので、スーパースターのような超人的な部分がありますが、篠田さんが演じる雪平夏見が絵空事にならないようにしたい。二次元ではなく三次元ですね。血肉が通っている人間になるように僕や周りの登場人物が表現できたらいいなあと思います。

※出演者インタビュー３は２２日に配信。