松尾スズキ氏 伝説舞台「業音」演劇でしかできない笑い 平岩紙がCMイメージ一新

[ 2017年9月21日 12:00 ]

松尾スズキ氏作・演出の舞台「業音」の1場面(左は松尾氏、右は平岩紙)(撮影:田中亜紀)
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 俳優の阿部サダヲ(47)や宮藤官九郎(47)らが所属する人気劇団の「大人計画」を主宰する劇作家・演出家の松尾スズキ氏(54)が手掛けた伝説的舞台「業音」が15年ぶりに再演。東京公演を終え、名古屋、福岡と巡業し、21日、大阪公演が開幕する。主演は数々のドラマや映画、スポーツキャスターの松岡修造氏(49)と共演する消臭剤「ファブリーズ」のCMなどでもおなじみの女優・平岩紙(37)。奇抜なヒロインを体現し、同CMの母親役のイメージを一新している。

 初演は2002年10月(東京・草月ホール)。悲劇をテーマとし、松尾氏が作・演出を務めるプロデュース公演「日本総合悲劇協会」の3作目として上演され、荻野目慶子(53)の体当たりの熱演が話題を呼んだ。

 限りなく深い人間の“業”の闇…。演歌歌手として再起を目指す元アイドルを主人公に、不幸が不幸を呼び、負の連鎖が奇怪にうねる。介護や宗教など、現代社会が抱える問題を余すところなく描き、悲劇性と喜劇性が見事に融合する作品となった。

 再演は、荻野目が演じた落ちぶれた元アイドルに平岩が挑む。松尾氏、平岩をはじめ、大人計画のメンバー・池津祥子(47)伊勢志摩(48)宍戸美和公(52)宮崎吐夢(46)皆川猿時(46)村杉蝉之介(52)、ダンサー・康本雅子(43)とエリザベス・マリー(28)=ダブルキャスト=が出演。10月には「大人計画」初の海外公演となるパリ公演を行う。

 主役は、松尾氏が「いろいろな人に頼みましたが、なかなか引き受けてもらえなかった」と明かしたことに納得の、ぶっ飛んだキャラクター。平岩は起用に応え、終盤に帯びる狂気は息をのむ。

 ストーリー展開は目まぐるしく、混沌とした世界に見る側の感覚もフル回転。神の存在を問う哲学的なテーマの中、松尾氏がこだわるのは“笑い”。「僕は芸人さんのようなアプローチがどうしてもできなくて、物語に乗っかった上で笑いを提示することしかできない。だから『演劇をやりたい』じゃなく『演劇しかできない』みたいな、そんな感じなんですよね」。演劇でしかできない笑いで疾走する2時間を堪能したい。

 【「業音」あらすじ】母の介護をネタに、演歌歌手として再起を目指す落ちぶれた元アイドルの土屋みどり(平岩紙)は、借金を返すため、マネジャーの末井明(皆川猿時)とともに自身が運転する車で目的地に向かっていた。途中、自殺願望を持つ堂本こういち(松尾スズキ)と、堂本をこの世につなぎ止める聡明な妻・杏子(伊勢志摩)と遭遇し、不注意から杏子をはねてしまう。杏子は脳を損傷し、自力による移動や食事、意思疎通ができなくなる。怒り狂った堂本は責任を迫り、みどりを拉致連行。“有罪婚”と称し、2人は結婚。奇妙な共同生活が始まる…。

 ◆「業音」公演日程【大阪公演】9月21日(木)〜24日(日)=松下IMPホール【松本公演】9月29日(金)〜30日(土)=まつもと市民芸術館・実験劇場【パリ公演】10月5日(木)〜7日(土)=パリ日本文化会館

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