畑中葉子「後から前から」やり遂げたから今がある

[ 2017年4月23日 11:00 ]

世間を驚かせた“転身”について語った畑中葉子
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 芸能界でこの人ほど大きな転機を経験した人も珍しい。現在、セクシーソングの女王として再ブレーク中の歌手で女優の畑中葉子(58)だ。デュエット曲「カナダからの手紙」が大ヒット、その後、突然、日活ロマンポルノに出演し世間を驚かせた。清純派歌手がなぜ成人映画に?ドラマチックな彼女の半生をたどった。

 ♪ラブレター フロム カナダ〜のフレーズで一世を風靡(ふうび)した「カナダからの手紙」が世に出たのは、1978年のこと。原宿に「竹の子族」が現れ、小中学生の間には口裂け女の噂がまことしやかに流れていた。作曲家で歌手の平尾昌晃さん(79)の甘い歌声、その横で歌う彼女のキュートな魅力がベストマッチ。40年近くたつ今でもデュエットソングの定番の一つになっている。

 「その年の3月に高校を卒業しました。それからどんどん忙しくなって、当時は一日3時間ぐらいしか睡眠時間がなかったですね。テレビの音楽番組は平尾先生と一緒でしたけど、地方のサイン会などは私一人。先生の等身大のパネルを持っていって、その横で歌ってましたから」

 「カナダ…」は、元々平尾さんのデビュー20周年の記念曲。発売の前年、平尾さんが主宰するミュージックスクールで相手役のオーディションが行われ、アイドル志望だったこの人が選ばれた。透明感のある伸びやかな声、清純なイメージが作品にぴったり。歌謡曲全盛の時代。レコードが店頭に並ぶやいなやヒットチャートを急上昇。一躍、人気歌手の仲間入り。NHK紅白歌合戦にも出場を果たした。

 いきなりの大ヒット。それも平尾さんとのコンビだったことが、逆に2曲目を難しくした。「再びデュエットで」と2匹目のドジョウを狙う所属事務所に、「アイドルとして活動したい」と猛反発。話し合いは平行線をたどった。結局、翌年1月、念願のソロでシングルを出したが思うように売れず、焦りと自己嫌悪の日々。仕事も減り、意欲もうせてしまった。

 そんな時、彼女を支えた若手作曲家と恋に落ち、電撃結婚。一時、歌手活動を休止した。19歳の春だった。「思い込んだら突き進んでしまう性格なんですね。事務所にも内緒で婚姻届を出しました。あの頃は何よりも彼のことを優先してしまい、仕事をすっぽかしたりしました。本当に周囲に迷惑ばかりかけてましたね」。しかし、若さだけの新婚生活はわずか数カ月で終止符が打たれた。経済的なことが大きな原因だった。

 80年1月、離婚。「もう一度芸能界で仕事がしたい」。関係者にわびを入れ再起を期した。一連の彼女の振る舞いに芸能マスコミから厳しいバッシングも飛んだ。ようやく一つ仕事のオファーが来た。週刊誌の水着のグラビアだった。それが転機の引き金。グアム島で撮影したショットは予想以上の反響を呼んだ。すぐに男性誌から「ぜひセミヌード写真を」との依頼が舞い込んだ。

 ある日、事務所から「これからは思い切ってセクシー路線で売ったらどうか」と言われた。

 「やっぱり初めは抵抗がありました。すぐに返事はできませんでしたね。でも、もう20歳になってましたし、大人として社会人として、それまでの自分にけじめをつけようと思い決断しました」

 新たなジャンルへの挑戦。それが、シングル曲「後(うしろ)から前から」。一度聞いたら忘れられない意味深なタイトル。日活(にっかつ)では、「愛の白昼夢」「後…」の映画化の企画が同時進行していた。事務所からは「成人映画だよ」と言われた。その意味も知らずに「分かりました」と了承。撮影の打ち合わせで初めてロマンポルノだと気づいた。

 「いきなり裸のシーンのコンテを見せられました。その時は“これって何ですか。私にはできません”って。六本木からそのまま泣きながら家まで歩いて帰ったことを覚えてます。でも、受けてしまった以上はやらなきゃいけないし。あの時が一番つらかったかもしれません」

 撮影がスタート。初めての演技、戸惑いと緊張でカメラが何度も止まった。そんな彼女にプロ意識を目覚めさせたのが、共演の先輩女優の風祭ゆきだった。男優相手のどんなシーンでもさっそうと登場して、パッと脱いで「ハイ、OK」。「お疲れさま」と引き揚げていく、その姿だった。

 「そばで見ていて目が点になりましたね。これが本当の女優さんなんだって。それまで迷ったり悩んだりしていた自分が恥ずかしくなりました。あれで気持ちの整理がつきました。それから劇団に入って演技の勉強も始めました」

 公開されると「あの“カナダから”の畑中葉子が」とのギャップもあって、歌も映画も大ヒット。それはアイドルを目指した少女が、大人の女優として独り立ちした瞬間だった。

 現在は再婚して2人の子供の母親として幸せな生活をエンジョイ。ライブなどを中心に活動しており、5月3日には東京・江古田マーキーのステージに立つ。

 ◆畑中 葉子(はたなか・ようこ)1959年(昭34)4月21日生まれ、東京・八丈島出身。78年、高校3年在学中にデュエット曲「カナダからの手紙」で歌手デビュー。ソロシングルは「後から前から」「もっと動いて」「モア・セクシー」など。出演した映画、テレビドラマは多数。

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