“ジャニーズ系”だった小日向文世 おデコとともに広がる役柄

[ 2015年7月19日 12:00 ]

インタビューに応じる小日向文世

 最近、この顔を見ない日はない。俳優の小日向文世(61)。NHK連続テレビ小説「まれ」、フジテレビのドラマ「リスクの神様」(水曜後10・00)に出演中で、映画「HERO」も公開。ソフトバンクのCMも始まり、まさに引っ張りだこだ。優しい笑顔が印象的だが、悪人役にも起用される理由は「広めのおでこ」。出掛けのキスを欠かさない愛妻家ぶりも語った。

 モノクロ写真のイケメンは、23歳の時の小日向だ。劇団「オンシアター自由劇場」の願書と一緒に送ったもの。38年後の本人と見比べ、ついつい頭に目がいってしまうが「髪の毛もいっぱいあったからね。ちょっとジャニーズ系でしょ?」とちゃめっ気たっぷり。

 薄くなった頭髪もネタにする明るさで、カメラマンに「なるべくたくさん髪の毛が写るように撮ってね。枝豆みたいになっちゃうから」とリクエスト。通販で海外から育毛剤を取り寄せ努力していることも明かし「ハゲじゃなく、おでこが広め。ここまでが顔だと思ってるんだけどな」と生え際を懸命に指さす姿はとてもチャーミングだ。

 イイ人ぶりは、ドラマや映画で演じる優しいお父さんの雰囲気そのまま。そんな“白小日向”の一方で、「まれ」では気難しいパティシエ、映画「アウトレイジビヨンド」(12年)では暴力団と癒着する刑事といった“黒小日向”の顔も見せる。「このおでこが功を奏したのか、薄くなってから怖い役が来るようになった。オールバックって怖いイメージがあるんでしょうね」と笑う。

 「リスクの神様」では社長に反目する商社の専務役。白も黒も併せ持つグレーな役どころで、平幹二朗(81)、吉田鋼太郎(56)ら舞台出身の演技派がひしめく中で存在感を見せつける。

 自身も「オンシアター自由劇場」で主宰の串田和美氏(72)らに鍛えられた。42歳の時に劇団が解散して仕事がない日が続き、所属事務所に給料を前借りしたこともあった。転機は01年、47歳の時。三谷幸喜氏(54)演出の舞台「オケピ!」を見たフジテレビのプロデューサーがドラマ「HERO」に起用。とぼけた検察事務官役で味を出し、出演依頼が相次いだ。「それから走りっ放しだけど、役者を休んだらただの人。役の振り幅が大きいと楽しい」と充実ぶりを明かす。

 俳優になると父親に伝えた時、「志村喬みたいな俳優を目指しなさい」と言われた。黒澤明作品の常連で「生きる」で迫真の演技を見せた名優。「その言葉は忘れてません。そこに向かって頑張らなきゃと思ってます」

 高校では美術部で油絵に没頭。上京してデザインの専門学校に進学したが、1年の冬休みにスキーで腕を複雑骨折。2年近く入退院を繰り返し、写真学科に編入した。劇団の門を叩いた理由を「高校時代から劣等生で目立つ存在じゃないし、東京に出ても入退院の繰り返し。自分をアピールしたくてしょうがなかった」と振り返る。

 病院で過ごした青春時代。「当時の恋愛対象は白衣の天使。お気に入りの看護師さんが朝、脈を測りに来る時に寝たふりをしてるんだけど、バクバクしてて“バレてる~!”って恥ずかしくてね。ウブだったなあ」

 地元の北海道の病院に入院した時には、同い年の看護師との甘酸っぱい思い出も。「退院するときに“夏には必ず帰って来る”と言って東京に戻ったけど、その後、治療で千葉の病院に半年近く入院してしまって…。翌年の春に帰ると、彼女は婚約してたんです」

 39歳の時、11歳下の劇団の後輩と結婚。毎日“行ってきます”のキスを欠かさず「僕、好きになったら必ず捨てられる人生だったんですよ。女房には死ぬまでそばにいてほしいと思ってるので、よろしくねという気持ち」と照れることなく愛情表現。大学2年の長男、高校2年の次男とも、寝る前に必ずハグするといい、「うちで女房や子供たちの顔を見てリラックスしてるのが好き。うちがあっての自分」と語るマイホームパパだ。

 長男は大学で演劇部に所属。「今、僕よりも舞台に立ってます」とうれしそう。「卒業したらどうするのか分からないけど、僕は僕のやり方しか言えないから、まずは舞台でたくさんの役をやって演技を学べと言っています」。写真の頃の若かりし自分と同世代の息子へ、実感のこもったアドバイス。親子共演が見られる日が来るかもしれない。

 ◆小日向 文世(こひなた・ふみよ)1954年(昭29)1月23日、北海道出身の61歳。「オンシアター自由劇場」では看板女優の吉田日出子(71)の相手役を務め中核的存在として活躍。映画「銀のエンゼル」(04年)で銀幕初主演。フジテレビ系「あしたの、喜多善男」(08年)で連ドラ初主演を果たした。主な出演作はTBS「木更津キャッツアイ」(02年)、NHK大河ドラマ「平清盛」(12年)など。ソフトバンクのCMでは悪代官を演じている。

続きを表示

この記事のフォト

2015年7月19日のニュース