宇多田ヒカル 人間活動の“答え” 男児出産、波乱の運命に終止符か

[ 2015年7月19日 13:25 ]

ママとなった宇多田ヒカル

 宇多田ヒカル(32)が第1子となる男児を出産した。公式HPでの喜びの第一声は「うちに赤ちゃんが産まれました!」。“うちに”という言葉に、波乱万丈の人生でやっと“安息の地”を得たのだと感じた。

 真っ先に思い出したのは、今から10年以上前の02年4月、左側の卵巣に腫瘍が見つかり摘出手術をした時のこと。19歳の彼女は術後、医師に「私、赤ちゃん産めますか?」と尋ねたという。

 最初の結婚は闘病中の同年9月。15歳年上の映像作家、紀里谷和明氏との結婚生活は5年間。子供には恵まれなかった。その後も8歳年上の画家と交際したが結婚には至らず、昨年2月に8歳年下のイタリア人バーテンダーと電撃結婚した。

 アーティストではなく年下で、外国人というのは、それまでの相手とはまったく異なるタイプ。イタリア南部で暮らす夫の実家を「漫画に出てきそうな明るく賑やかな大家族」と表現した。一昨年に他界した母、藤圭子さん(享年62)が鋭敏すぎたため祖母や親戚と絶縁して育った中、劇的な環境の変化が訪れた。

 彼女が「人間活動に専念する」と宣言し、活動を休止してから5年。それまでは、最愛の母と「運命」としか言いようのないほど同じ道をたどってきた。

 母娘とも10代でデビュー。いずれも「天才少女」と衝撃を与え、宇多田はデビュー翌年に初アルバム「First Love」が800万枚以上をセールス。藤さんも同じく翌年に「圭子の夢は夜ひらく」の大ヒットをきっかけにオリコンアルバムチャート41週連続1位を記録。日本音楽界で今後も破られないであろう不滅の金字塔を母娘そろって打ち立てている。

 絶頂期に結婚し、離婚したのも同じ。彼女は卵巣腫瘍、藤さんはのどのポリープの摘出手術を若くして受けており、28歳になるタイミングで「休業」「引退」という大きな決断を選んだことまで同じだ。そして、そんな母も、三味線を弾きながら旅回りをしていた祖母と重なっていた。

 3歳年上と結婚した母とも異なる、8歳年下の外国人男性を選び、漫画に出てくるような陽気な大家族を得たのは、決して偶然ではなく、人間活動の答えが、運命を素直に受け止めながら自ら新たな道を開くことにあったように思う。そして待望の赤ちゃんが「男の子」だったことは、波乱万丈がさだめられた女の運命の血脈に終止符が打たれたようにもとれる。

 彼女は、赤ちゃんのことを「良くお乳を飲んで良く寝る、とっても穏やかな男の子」と表現した。育児をしながら復帰作を制作中。穏やかな幸せに包まれた中、ママになった彼女はどんな歌を紡ぐのか。天国にいる最愛の母への答えは、きっとその中にある。

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2015年7月19日のニュース