自殺から6日目の対面 宇多田、藤圭子さんと無言の会話

[ 2013年8月28日 06:00 ]

霊きゅう車の助手席に乗り碑文谷会館を後にする宇多田ヒカル

 歌手の宇多田ヒカル(30)が27日、亡き母と悲しみの再会を果たした。母親で歌手の藤圭子さんがマンションから身を投げ、62歳で亡くなった22日から6日目。遺体の安置された都内の葬儀所を訪れた。父で藤さんの前夫の音楽プロデューサー・宇多田照實氏(65)らと火葬に立ち会い、最後の別れを惜しんだ。

 午前8時ごろ、宇多田と照實氏を乗せた白のワンボックスカーが、藤さんの眠る東京都目黒区の碑文谷会館に到着した。黒い服装の宇多田は、終始伏し目がちで、沈痛な表情だった。

 藤さんはここ12年、世界各国を旅しており、音信不通に近い状態が続いていた。確執が報じられている照實氏も含め、久々の対面は悲しい形で実現した。約40分後に姿を現した宇多田に、報道陣約30人から「対面されて、どんな言葉を掛けましたか」などの質問が飛んだが無言。照實氏らと一緒に棺を霊きゅう車に運び、助手席に乗り込んだ。膝上に白い菊の花束を乗せ、火葬場のある品川区の桐ケ谷斎場に向かった。潤んだ目が、うつろに宙を見つめていた。

 最愛の母の死から6日目。気持ちの整理に長い時間を要した。「嵐の女神」(10年)で「お母さんに会いたい」と深い愛情を表現し、歌手の先輩としても尊敬する存在。一方でパニック障害などの病を抱え、家族にも不信感を募らせる母への困惑と悲しみも深かった。前日26日、ブログで母の死後初めてコメント。「家族としてどうしたらいいのか、何が彼女のために一番良いのかずっと悩んでいた」「翻弄(ほんろう)されるばかりで何もできなかった」と母の力になれず悔いていた。

 午前9時半からの火葬に立ち会ったのは宇多田父子ら親族、関係者の5、6人のみ。多くの人の心を震わせた昭和の歌姫としては寂しい旅立ちだった。だが斎場に居合わせた人は、宇多田の様子を「言葉はなかったけど、涙もなかった。気丈で立派だった」と話した。久しぶりに見た母の顔。じっくり重ねた無言の会話が、心の整理をつけたのかもしれない。「彼女は天才。私よりずっと凄い」と誰より娘の活躍を喜んだ母。悲しみを乗り越え、心を震わす歌声をファンと母に届けることが何よりの手向けになる。

 宇多田は斎場関係者らに一礼して、照實氏とともに足早に車に乗り込むと、警備員らの誘導を受けて裏口から斎場を後にし、照實氏の住居とみられる港区のマンションに戻った。ただ、斎場でもマンションに入る際も2人が藤さんの遺骨を持つ姿は確認されなかった。

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2013年8月28日のニュース