「女優助演賞」松坂慶子 人間性喪失「戦火」巧みに

[ 2009年1月22日 06:00 ]

 【毎日映画コンクール 女優助演賞】松坂慶子(56)が「火垂るの墓」で貫録の女優助演賞だ。これまで主演賞2度、助演賞1度、そして田中絹代賞も受賞している名女優だが、通算5個目の勲章に「本当にうれしく思います」と声を弾ませた。

 対象作は野坂昭如氏(78)の直木賞受賞作の実写版。1945年6月の神戸空襲で母を亡くしたきょうだいが頼って行き着く西宮の遠せきが役どころ。自らも2人の子供を抱え、戦火を逃れてきたきょうだいを温かく迎えることもできない。つい冷たい仕打ちをしてしまうおばを、それこそ憎たらしいほど巧みに演じてみせた。
 出演依頼を受けるか悩んだそうだが、日向寺太郎監督(43)の熱意に打たれて決意。「記憶の中の神戸」などを著している体験者の豊田和子さん(79)から話を聞いて役作りに努めた。「“戦争中は、みんな自分の家族を守ることだけで精いっぱい。あったかい人なんかいなかったのよ。人間の理性とか道徳心を失わせてしまう。それが戦争なんですよ”と。とてもいい話が聞けました」
 台本には「裏がなくてその時その時に本当の言葉が出る」など書き込みがぎっしり。「この作品がきっかけで母の戦争中の話も聞けたし、賞を頂けたことでまた皆さんに注目していただける。それもうれしい」としみじみ語った。

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2009年1月22日のニュース