「男優主演賞」阿部寛 2作品を無の境地で熱演

[ 2009年1月22日 06:00 ]

男優主演賞を受賞し、ガッツポーズする阿部寛

 毎日映画コンクールの各賞が決定し、「歩いても 歩いても」「青い鳥」の異質の2作品で心にしみいる演技を見せた阿部寛(44)が男優主演賞を初受賞した。

 「映画の賞は初めて。うれしいですね」と阿部は喜びをかみしめた。
 是枝裕和監督(46)と待望のジョイントを果たした「歩いても 歩いても」は一家の長男の命日に年老いた両親のもとに集まった家族を通して、それぞれの悲喜こもごもをあぶりだした家庭劇。出来の良かった兄と常に比べられてきた肩身の狭さや両親への反発心など、次男が抱える“居場所のなさ”をリアルに表現してみせたのが阿部だ。
 「余計なアプローチは一切しなかった。原田芳雄さん、樹木希林さんら共演者が共演者ですから、主役といっても頑張る必要はありませんでした。無の状態で是枝さんの演出に身を委ねました」
 出過ぎず、埋没することもなく、その絶妙なさじ加減で作品世界に溶け込んでみせた。
 一方の「青い鳥」ではいじめの問題で揺れる中学校に派遣された吃(きつ)音の臨時教師を存在感たっぷりに演じた。「発音障害を持ったこの先生も、いじめられている生徒たちに近い心を持っている。吃音だから責任ある言葉を選んで生徒たちに発する。いじめの解決を提示するわけではなく、見た人がそれぞれ何かを感じてもらえればいいと思って演じました」
 30人を超える生徒たちとは現場でも役名で呼び合い、距離感を保った。「完全アウェーの状態でしたが、それも面白い経験でした」と笑った。
 カリスマモデルから俳優に転身。実にさまざまな役を演じてきた。「最初は役柄が制限されたし、バカにもされた。その反動で、どんな役でもどん欲にやってやろうと思った。40歳を過ぎて主演の話も頂けるようになり、人物を深く掘り下げていくようになってきた。でも、あの頃のアグレッシブさが最近ないなと反省もしているんですよ」と苦笑い。阿部ちゃんがますます面白くなっていく。

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2009年1月22日のニュース