「朗希騒動」「ペッパーミル騒動」が大炎上した共通の理由 動き出した高校野球 NPBはどうする

[ 2023年3月31日 07:30 ]

ベンチでペッパーミルパフォーマンスをする東北ナイン
Photo By スポニチ

 今回の選抜大会の開幕戦、東北―山梨学院戦で「ペッパーミル騒動」が大きな話題になった。

 初回先頭、東北の選手が相手失策で一塁に出塁した場面で、こしょうをひくような「ペッパーミル」パフォーマンスを披露。だが、攻撃終了後に一塁塁審から「パフォーマンスは駄目」と注意。これに東北・佐藤洋監督は「なんでこんなことで子供たちが楽しんでいる野球を大人が止めるのかな」と語った。

 試合後、大会本部は「高校野球としては不要なパフォーマンスやジェスチャーは、従来より慎むようにお願いしてきた。試合を楽しみたいという選手の気持ちは理解できますが、プレーで楽しんでほしい」と見解を発表した。

 その後、「騒動」はネット上で大炎上。ヤフーニュースの記事にはコメントが殺到し、ツイッターでも多くの意見が投稿され、選手、監督、審判員への批判も多くあった。これは大会本部が発表した見解が招いたものだ。審判員の注意は相手選手が失策した「ふさわしくない場面」でパフォーマンスをしたことに本質がある。パフォーマンス自体が悪ければ、同じ試合でピンチをしのぐ度にガッツポーズをした東北の右腕・ハッブス大起(3年)も該当するが注意されなかった。その後の試合でも本塁打を打った打者や三振を奪った投手が何度もパフォーマンスやジェスチャーをしているが何の注意もない。つまり「パフォーマンス」はある程度許容されているのだ。

 「相手に誤解を与える可能性がある場面でのパフォーマンスだったので注意しました」。そう発表していれば騒動はここまで大きくならなかっただろう。大会本部の説明は「本質」から逃げたもので、納得がいかないファンたちは本当の理由を探し「犯人」を自分で決めようとする。だから炎上した。記者はこの現象に「朗希騒動」を思い出した。

 昨年4月のオリックス―ロッテ戦、試合中の投球判定に対して不服な態度を示したロッテ・佐々木朗希投手を注意しようとしたNPB審判員・白井一行球審の対応が大きな話題となった。マウンド上の佐々木朗に詰め寄ろうとした白井球審には多くのバッシングが寄せられたが、野球規則上では審判員として正しい行為だ。だがNPBは報道陣に対して対応しなかった。それによって、ネット上では白井球審への大バッシングが始まった。その中には「パワハラ」に該当するという意見もあった。確かに投手コーチを通じて注意するなど他の選択肢もあったが、退場でもおかしくない行為に対し、注意しようと歩み寄っただけであれほどバッシングされたのはおかしい。NPBが正当な理由があることを説明しなかったため、バッシングにつながってしまった。

 今大会の大会本部の動きは早かった。翌日の第2試合、大分商―作新学院(栃木)戦の9回にアピールプレーのやり直しで試合が終了する異例の場面があった。審判団は場内放送でジャッジについての説明を行っていたが、大会本部は第3試合終了後、窪田哲之大会審判副委員長が判定経緯を説明した。さらに守備側のアピールがなくてもアウトになる“追い越し”に見えたことについては「明確に認識には至らなかった」と審判団の見解を明かした。場内放送による説明だけで終わってもおかしくないケースで、大会本部はより丁寧な対応をとった。

 これこそが現場の審判員のジャッジに応える「運営」の責任ある対応だと思う。問題に向き合い、説明することで審判員や選手に対する悪意ある批判は減るだろう。そもそも理由が分からなければファンも選手も学ぶことができない。NPBには今大会で高校野球に起きた「変化」を見習ってほしい。(アマチュア野球担当・柳内 遼平)

続きを表示

2023年3月31日のニュース