ど根性で春1勝の英明 捕手送球利き腕直撃も寿賀「負けてはいけないと思った」 志願続投で粘り

[ 2023年3月20日 05:20 ]

第95回選抜高校野球大会第2日・2回戦   英明3-2智弁和歌山 ( 2023年3月19日    甲子園 )

<第95回選抜高校野球 第2日 智弁和歌山・英明>8回、中浦の二塁への送球がそれ、英明・寿賀(左)に当たる(撮影・平嶋 理子)
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 1回戦3試合があり、第3試合では英明(香川)が智弁和歌山(和歌山)を下して選抜初勝利を挙げた。8回には2番手左腕・寿賀弘都(3年)が捕手の送球を左肘に当てるアクシデントを乗り越えて1点差を守り、春夏4度の優勝を誇る強豪に競り勝った。

 ど根性で英明に大金星をもたらした。7回から登板した寿賀がアクシデントに見舞われたのは8回だ。1点差に迫られ、なお1死二、三塁。2ボールとした投球後、二塁走者を刺そうとした捕手・中浦浩志朗の低い送球が後ろを向いていた利き腕の左肘に直撃した。

 マウンド前方で両膝をついて倒れ込むほどの痛み。治療に戻ったベンチで香川純平監督から「いけるか?」と聞かれた。「香川先生が強気だった。僕も負けてはいけないと思った」。ベンチ裏でアイシングやテーピングを施して戻った。

 四球で満塁とした後、一ゴロと中飛で1点差を守り切った。「痛みはあったけど、腕を振って投げようと思った」。志願の続投で投げ込んだ計10球の気迫。代わった9回は無死二塁を耐えた百々愛輝(どど・あいき)の力投を見届けた。

 「無理かな…と思ったけど、(捕手の)中浦と香川先生の言葉が自分を強気にさせてくれた」

 当てた中浦は「やらかして、ブルーな気持ちになった」と落ち込み、治療中に「腕を振って投げれば打たれないから」と精いっぱい励ました。同点の8回には左前へ殊勲の決勝打。寿賀も6回に左前へ先制打を放ち、攻撃でも連動した。

 寿賀が中浦を「一緒に甲子園を目指そう」と英明に誘った。投球練習では中浦が「凄いわ」「真ん中でも打たれない」と褒めてくれる。寿賀は「根性はないし、弱気な方です」と自己分析。信頼する女房役が自信をくれた。「力だけでは絶対に勝てない相手。応援も凄い迫力だったけど、要所を締められて良かった」。力を合わせ、ドラマを引き起こした。 (河合 洋介)

《中谷監督に恩返し》
 ○…香川純平監督はベンチ裏で涙したという。19年に父・智彦氏(現・藤井学園寒川監督)の後を継いで就任。11年夏の父に続き、親子2代で甲子園勝利をつかみ、「守りに入ってはダメと言い聞かせた。春は勝てていなかった。勝ちたかった」とうなずいた。昨年11月に3年ぶりに開催された「甲子園塾」に参加し、講師役だった智弁和歌山・中谷仁監督に師事。“恩返し”ができ、「いろいろな質問に答えてくれた。教わったことを全部出そう、と。うれしいし、感謝の思い」と頭を下げた。

 【データ】英明が智弁和歌山を下して初戦突破。15、18年選抜は初戦敗退。3度目の出場で選抜初白星を挙げた。春夏通じても11年夏の1回戦・糸満(沖縄)戦での勝利以来、甲子園2勝目。香川勢が和歌山勢に勝つのは、春夏通じて73年春に高松商が向陽に2―0で勝って以来50年ぶり。対戦成績は通算7勝7敗で、夏1勝3敗に対して春6勝4敗で白星が先行。

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