センバツ21世紀枠候補・稚内大谷 日本の私立最北端に春の風 過酷な環境に負けず憧れの聖地目指す

[ 2022年12月10日 04:30 ]

21世紀枠候補に選ばれた稚内大谷ナインは、サハリンを望む校舎屋上で喜ぶ(撮影・石川加奈子)
Photo By スポニチ

 日本高野連は9日、第95回選抜高校野球大会(来年3月18日から14日間、甲子園)の21世紀枠候補9校を発表した。北海道地区は私立高校で最北端に位置する稚内大谷が選ばれた。約6カ月間、グラウンドで練習ができない過酷な気候条件にも負けず「甲子園最北端出場」の更新を目指す。出場3校は一般選考の33校とともに、来年1月27日の選考委員会で決定する。

 最高気温マイナス1度だった稚内に、うれしい知らせが届いた。44キロ先にロシア・サハリンを見渡す校舎の屋上で、稚内大谷ナインが喜びをかみしめた。高橋大空主将(2年)は「雪上トレーニングで鍛えた足腰を武器に、最北の野球を見てほしい」と甲子園初出場への強い思いを口にした。

 私立高校では日本最北端。日本最北端の礼文島の公立校・礼文は野球部がなく、公立の稚内に次ぐ2番目に北にある高校野球部だ。冬は3メートルの積雪に加えて強風が吹き荒れ、平均風速10メートル以上の日が年間90日。冬場の日課、雪上100メートルダッシュ30本では耳が凍傷になりかける。練習試合のためには旭川までバスで4時間、札幌には6時間と時間と費用もかかる過酷な環境。その困難の中で、80、81、93年の夏の北北海道大会決勝で3度のサヨナラ負けを経験しつつ、今秋も北海道大会出場と諦めずに前進を続けてきた。

 小、中学生への野球指導やグラウンド開放など、地域の子供を育てながら受け皿に。82年から春の交通安全キャンペーン駅伝参加、86年から独居老人除雪ボランティアなどの地域貢献も評価された。

 甲子園最北端出場は13年選抜21世紀枠の遠軽。稚内は遠軽よりも約150キロ北で、出場がかなえば最北端記録更新となる。「全国放送で注目される。出場して活躍したい」。高橋大主将は、ナインの気持ちを代弁した。(石川 加奈子)

 ▽21世紀枠 甲子園への出場機会を広げるために01年の第73回大会から導入。練習環境などのハンデ克服や地域貢献など戦力以外の要素も加味する。秋季都道府県大会16強(加盟129校以上の場合は32強)以上を条件に、全国9地区から1校ずつ候補として推薦。東(北信越、東海以東)、西(近畿以西)から1校ずつ、残り7校から3校目を選ぶ。

続きを表示

この記事のフォト

2022年12月10日のニュース