「青春って凄く密」名言誕生秘話 仙台育英・須江監督 単独インタビューで明かす 共感、反響大きく

[ 2022年8月26日 07:00 ]

仙台育英・須江監督独占インタビュー(1)

甲子園のウイニングボールを手にする仙台育英・須江航監督(撮影・篠原 岳夫)
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 今夏に東北勢初の甲子園大会優勝を果たした仙台育英(宮城)の須江航監督(39)が25日、スポニチ本紙の単独インタビューに応じた。春夏通じて13度目で東北勢の悲願を果たした試合後のインタビューではコロナ下で3年間を過ごしてきた全国の高校生を思いやり「青春って凄く密」のメッセージを発信して時の人に。第1回は感動インタビューが生まれた経緯に迫った。(聞き手・柳内 遼平)

 ――東北勢初の甲子園大会優勝、おめでとうございます。現在の心境は?
 「自分たち以外のところが盛り上がっていて、凄いなと思います。選手はよくやってくれました。宮城の学校なのに、東北の人がいっぱい喜んでいると感じました。(記念球も)持ってきました。多分、学校ではなくて資料館みたいなところに行くと思います」

 ――試合直後のスピーチでは全国の高校生に向け「青春って凄く密」という涙のメッセージで感動を届けた。
 「自分が泣いている動画をたくさん送っていただきました。恥ずかしい限りです。最初に(インタビュアーから)“こんなこと聞きます”なんて言われずに始まりました。まさかコロナのことを聞かれるとは思っていなかったです」

 ――事前に考えていなかった?
 「その時に思ったことを言葉にしました。でも(青春って凄く密という言葉は)よくミーティングで言っていました。(コロナ下となった)2020年ぐらいからです。大人が思っているより高校生のストレスは半端ではない。そんなにしつこく言わなくてもいいのではないか、というくらい自分も言わざるを得ない状況でした。でも、それがなかなか改善する気配がない。何とか高校生とか中学生とか、小学生とか大学生に思い出を残すため、大人たちが英知を結集してやるぞ、と思っていました。選手にも事あるごとに言ってきました。“青春って密だけど、今は離れないとダメ”や“今は許されないけど、卒業して世の中が落ち着いたら、思い切りそういうことしようぜ”、そのような言葉をかけてきました」

 ――その言葉が日本中の共感を呼んだ。
 「学校の先生や高校生からたくさんの連絡が来ました。全国の中体連、教育委員会。そういう方々からも連絡がありました。“代弁してくれてありがとう”、“励まされました”など7000件くらいのメッセージを受け取りました」

 ――練りに練ったスピーチだと思っていた。
 「練ったとすれば“東北の皆さん、おめでとうございます”は言おうと思っていました。あとは継投がどうとか聞かれると思って、何となくイメージして(質問を)待っていましたけど、“コロナ下で頑張ってきた3年生に向けてどんな言葉をかけますか?”と。だから思っていることを言いました。本当に変なことを言わなくてよかったと思います」

 ――まだまだ、コロナは予断を許さない。
 「甲子園大会は日程変更をするなどして、出場辞退はありませんでしたが、出場できなかった選手もいました。インターハイなど他競技では辞退する学校もありました。文化部のコンクールも辞退、中止は続いています。もうそういうことは起きないでほしいと願っています。うちは4000人近い生徒がいて各部活が一生懸命。高校野球だけが部活ではありません。地区大会で仙台南さんが辞退されたのは僕の中で非常に大きかった。良いチームだったので」

 ――チームスローガンの「日本一からの招待」という言葉はいつから使っているか?
 「2009年に中学校の監督をしている時です。始まりは素人だったので野球をやったことのない子たちから教えさせてもらって4年目ぐらいの時に県大会の優勝候補になりました。でも準決勝で負けた。これ以上できないくらい練習したけど負けてしまった。何をクリアしたらたどり着くかな、と思った時に、招かれないと無理だと考えました。招かれるぐらいの取り組みをしないと、そういう舞台にたどり着けないと思ったんです。(仙台育英の)監督になった時もこの精神を引き継いだ方がいいと思いました」

 ――日本一から招待され、今後は?
 「招かれたからといって全てが正しかったわけじゃない。足りないこともあるし、今年の野球が育成と勝利を両立しているかといえば、そうじゃない可能性もある。投手は大きな問題はないと思っていますが、アップデートを続けていこうと思います」

 《就任5年目 5度の出場》須江監督は18年の就任から今年で5年目となり、春夏合わせて5度の甲子園出場に導いた。初の甲子園となった18年夏は、浦和学院(埼玉)との初戦で0―9で敗れたものの、19年夏、昨春選抜は8強入りと安定した成績を残してきた。須江監督の恩師の佐々木順一朗前監督(現学法石川監督)は、春夏通算19度の甲子園出場で、2度の準優勝を経験した。

 ◇須江 航(すえ・わたる)1983年(昭58)4月9日生まれ、さいたま市出身の39歳。仙台育英では2年時から学生コーチを務め、3年時に春夏の甲子園に出場。八戸大(現八戸学院大)でも学生コーチを務めた。06年から仙台育英の系列の秀光中軟式野球部監督を務め、14年に全国大会優勝。18年1月から仙台育英監督に就任し、今夏を含めて5度の甲子園出場に導く。情報科教諭。

 【感動呼んだ甲子園Vスピーチ】

 宮城の皆さん、東北の皆さん、おめでとうございます!100年開かなかった扉が開いたので多くの人の顔が浮かびました。準決勝を勝った段階で本当に東北や宮城の皆さんから多くのメッセージを頂き、本当に熱い思いを感じていた。それに応えられて何よりです。

 (今の高校生は)入学どころか、中学校の卒業式も(コロナ禍で)ちゃんとできなくて。僕たち大人が過ごしてきた高校生活とは全く違う。青春って凄く密なので、でもそういうことは全部ダメだ、ダメだ、と言われて、活動しててもどこかでストップがかかって、どこかでいつも止まってしまうような苦しい中で、でも本当に諦めないでやってくれたこと。でも、それをさせてくれたのは僕たちだけじゃなく全国の高校生のみんなが本当によくやってくれました。

 例えば今日の下関国際さん、大阪桐蔭さんとか、目標になるチームがあったから諦めず暗い中でも走っていけた。本当に全ての高校生の努力のたまもの。ただただ最後、僕たちがここに立ったというだけなので、ぜひ全国の高校生に拍手してもらえたらな、と思います。(一部抜粋)

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