【スポニチスカウト部(21)】ENEOSの左腕加藤 制球力ある和田タイプ 名将3人の教えが自信の源

[ 2022年7月12日 06:15 ]

3人の名将に恩返しを誓うENEOS加藤三範

 今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア野球担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手たちの素顔を紹介する。第21回は、社会人野球屈指の強豪・ENEOS(横浜市)の最速147キロ左腕・加藤三範(みづき)投手(23)。高校、大学、社会人の各カテゴリーで名将から教えを授かった男がプロの世界に旅立つ。

 また一つ、野球人として学んだ。社会人野球最高峰の舞台である都市対抗出場を懸けた西関東2次予選。ENEOSを率いる大久保秀昭監督は、硬くなる選手たちに「この独特の雰囲気はワクワクする。選手が一番、楽しんでほしい」と語りかけた。

 厳しい状況を楽しむ。教えが胸に響いた加藤は6月9日、横浜スタジアムで行われた三菱重工East戦で体現。9回を3安打1失点完投勝利で、3年連続52度目の本大会出場を決めた。「投げたいところに投げられた」と会心の投球だった。

 社会人野球で成功するためには、150キロの剛速球は必要ない。逆に加藤は剛速球以外の全てを備えている。140キロ台前半の直球に「カウントが不利でも自信を持って投げられる」という2種類のスライダーなど、多彩な変化球で打者を幻惑する。初回と変わらぬ球威で9回を投げきれるスタミナも魅力。アマチュア球界屈指の左腕としてスカウトが注視する存在だ。

 誰もがうらやむ輝かしい経歴。菊池雄星(ブルージェイズ)に憧れて地元・岩手の花巻東に進学。佐々木洋監督の下、2年夏に夢の甲子園出場を果たし「野球というもの、人間としての在り方を教えてくださった」と感謝する。筑波大では動作解析の第一人者でもある川村卓監督から、力を発揮できる投球フォームや、打者と対する時の考え方を学んだ。常勝を求められるENEOSでは大久保監督とともに勝利を追求。「僕の野球人生において必要な3人の名将。恩返しをしたい」とドラフト指名を誓う。

 18日に開幕する都市対抗はドラフト会議(10月20日)前の最後の主要大会だが「今までやってきたことを出したい。100%の力を出せば勝利につながる」と自然体を強調。これまで歩んできた道が自信の源だ。(柳内 遼平)《昨年交流時の助言に感謝 東芝の吉村に「勝ちたい」》勝利を渇望する相手がいる。同じ西関東地区から都市対抗に出場する、東芝のエース右腕・吉村貢司郎投手(24)だ。最速153キロの直球と多彩な変化球を操り、今秋のドラフト1位候補に挙がる男は、昨年の都市対抗でENEOSに補強選手として加わった。物おじしない加藤は吉村に対してコースの狙い方、先発登板の調整方法などを質問。ライバルチームの主力投手にもかかわらず、吉村は丁寧に回答し「一から百まで聞いても嫌な顔をせず教えていただいた」と感謝する。今年の都市対抗はお互いが勝ち進めば準々決勝で激突。「無失点に抑えて勝ちたい」と恩返しの快投を誓った。

 ☆球歴 山田町立船越小1年から野球を始める。山田中では軟式野球部に所属。花巻東では1年秋からベンチ入り。筑波大では1年春からベンチ入りし、2年時に大学日本代表候補に選出。21年に加入したENEOSでは1年目から都市対抗と日本選手権に出場。

 ☆筑波大時代の後輩 1学年下に佐藤隼輔(現西武)。プライベートでも仲が良く「一緒の舞台で戦いたい」。

 ☆趣味 故郷の岩手県山田町で行う釣り。思い出の釣果は家族とともに行った日に釣り上げて食した巨大なアイナメ。

 ◇加藤 三範(かとう・みづき)1998年8月28日生まれ、23歳。岩手県山田町出身。1メートル82、81キロ。左投げ左打ち。

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