巨人・戸郷の「間」 マルテに狂わされた 魔の“9・84秒”

[ 2021年9月4日 05:30 ]

セ・リーグ   巨人3―7 ( 2021年9月3日    甲子園 )

<神・巨>7回1死、マルテに右前二塁打を浴びる戸郷(撮影・平嶋 理子)
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 【追球ズーム ここにFOCUS】9・84秒の「間」に、巨人・戸郷は引き込まれた。「大事な試合だったので最後まで粘れず、申し訳ないです。次また頑張ります」と悔しさを押し殺すように話した。分岐点となったのは3―1の7回1死。ここで、マルテに意図的につくり出された「間」が痛打の呼び水だった。

 2球目の前、マルテは左足をバッターボックスから外した。左肩を回す。右肩を上げる。バットの先でホームプレートに触れる。「もう少し待て」と言わんばかりに球審に右手を向け、やっと視線を前に移した。戸郷が捕手の返球を受け、2球目を投じるまでは9・84秒だった。

 1~5回は一人の走者も許さない完全投球。テンポの良さは際立っていた。「スピードアップ賞」に輝いた昨季は、無走者での平均投球間隔が10・8秒だった。この日はほとんどが6秒台。戸郷が自身の「間」に引き込み打者を制圧していた。

 マルテの前打者で、中飛だった近本には同じ場面で6・16秒。マルテには3・68秒も長くかかった。その間、マウンドで静止して、準備が整うのを待った。相手の「間」で投げることになり、外角低めを狙った直球が内寄りに。右翼線に運ばれ、二塁打とされた。

 以降はセットポジションでの投球となる。四球、2連打と崩れて6回1/3を5失点。宮本投手チーフコーチは「先発としてランナーが出てバタバタくるようではもろい」と語り、原監督は「やはりセットポジションから、まだまだ上積みしないといけない」と促した。

 野球は投手が一球投げるごとに試合が途切れる「間のスポーツ」。そこに勝負のあやがある。(神田 佑)

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2021年9月4日のニュース