【内田雅也の追球】勝利の女神は笑いと謙虚を好む 侍ジャパンの教訓的な開幕戦 目についた重さと消極性

[ 2021年7月29日 08:00 ]

東京五輪第6日 野球1次リーグA組   日本4ー3ドミニカ共和国 ( 2021年7月28日    福島県営あづま球場 )

<日本・ドミニカ共和国>6回無失点の好投を見せた山本(撮影・北條 貴史)
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 劇的勝利のとき、福島県営あづま球場の雨は上がり、また、赤トンボが舞い、ヒグラシの声が戻ってきていた。

 あの東北の虫たちとともに覚えておきたい。勝ったから前向きにとらえられる問題があった。

 6回無失点、3回連続3者凡退と好投していた先発・山本由伸を88球で代えたのはどうか。

 元阪神監督・岡田彰布が著書、その名も『動くが負け』(幻冬舎新書)で<戦況が膠着(こうちゃく)すればするほど動きたくなくなる>としている。<ベンチでも静かに構え「こちらからは動かない」と腹に決めている>。先に動き、先取点を与えてしまった。

 0―0均衡の7回表、青柳晃洋には厳しい登板だった。2死一、二塁。左のC・バレリオを追い込んでからシンカー3連投、高め見せ球をはさんでまたシンカーとは、シーズン中あまり見ない配球で、2点二塁打を浴びた。先に左2人にツーシームを打たれていたからか。ベンチにいた、普段コンビを組む梅野隆太郎なら、どうしただろう。

 日の丸の重みも開幕戦の緊張も理解するが、いかにも硬かった。慎重なのか作戦か。打者は積極性を欠いた。第1ストライク見送りがのべ38人中28人(73・6%)に上った。初打席で第1ストライクを振ったのは柳田悠岐と村上宗隆。その柳田は7回裏、初球を二塁打して反撃の1点を呼んだ。9回裏も柳田の内野安打から村上が同点打している。同点後で気分的に楽な1死満塁で仕留めた坂本勇人も初球打ちだった。分からぬ相手に初体験の舞台。まずは振って感覚をつかみたい。

 8回裏無死一塁。投球タイムが1秒50~60(手もと計測)とクイックが苦手なJ・ディアスに坂本送りバントはもったいない。山田哲人なら二盗でいけた。1死二塁とし、左前打で本塁突入指示をした三塁ベースコーチには重い空気を打破したい焦りがあったろう。

 プロ棋士・米長邦雄は<勝負師の経験から間違いない>と、勝利の女神の判断基準を二つあげている。『運を育てる』(祥伝社文庫)にある。一つは<いかなる局面においても「自分が絶対に正しい」と思ってはならない>と謙虚さをあげる。

 <もう一つは、笑いがなければならない>。あきらめない姿勢やつなぐ意識といった日本野球の美点は見えた。明るく、頭を上げて横浜に向かいたい。 =敬称略= (編集委員)

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