教訓生かした阪神・伊藤将 怖い広島・誠也を6球全てボール球で封じたのは大したもん

[ 2021年7月4日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5-0広島 ( 2021年7月3日    マツダ )

<広・神(9)> 7回2死満塁のピンチにマウンドに向かい伊藤将(右端)を激励する矢野監督(左端)(撮影・大森 寛明)
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 【畑野理之の理論】矢野燿大監督がピンチでマウンドに行くのは初めてだ。7回2死満塁で伊藤将司に「お前に任せた」という声をかけたらしい。自力で切り抜けて一つ成長してほしい思いが半分、残念ながらこの一打逆転の場面を救援してくれる投手が見当たらないチーム事情も半分だろう。ニコ~って笑顔をみせてうなずいた伊藤将は最後の力を振り絞り、代打・松山竜平を二ゴロで脱出した。

 本当に苦しかった。蒸し暑さ、降雨、そしてみずから2度の出塁もスタミナを奪っていった。それでも雑にならず、集中力を切らさない投球だったと思う。5回2死一、三塁では代打・長野久義を外角低めのボール球ツーシームを打たせて二ゴロ。この回3本の安打を集められたがゼロでしのいだ。中野拓夢の好守にも助けられた。

 丁寧だなと感じたのは4回2死無走者で鈴木誠也を迎えた場面だ。ここでも低めツーシームが威力を発揮した。阪神1点リードで、おそらく長打狙いだと思われる。なんてことない場面に見えるが、雨が降っていて、いつ中断、コールドゲームになるかもわからない状況で“試合終盤”になる可能性もあった。しかも鈴木誠は初戦で先制ソロ&3点二塁打で西勇輝を沈めており、打たれれば相手に一気に流れがいく。ツーシーム、真っすぐで2ボール。3球目、4球目の低めツーシームで空振りを奪い、5球目ツーシームはボール。フルカウントからもツーシームを続けて空振り三振を奪ったのだが、6球すべてボール球で最も怖い打者を抑えてしまうのだから大したものだ。

 西武で通算251勝の東尾修(本紙評論家)が、南海などで通算567本塁打の門田博光を2死無走者で迎えて本塁打狙いを察知したときに、わざと3ボールにしてから仕留めたという伝説を聞いたことがある。四球かなと思わせておいてからの打者心理を突くものらしい。まさか伊藤将がわざと2ボールにしてはいないだろうが、鈴木誠の一発狙いをうまく利用したのかもしれないとは思っている。

 ここまでの4敗はいずれも決勝点は本塁打で奪われたものだった。プロ初黒星となった5月15日の巨人戦ではジャスティン・スモークに逆転3ラン。0―1で敗れた同29日の西武戦で山川穂高にソロ。6月5日のソフトバンク戦でも甲斐拓也に逆転2ラン。同19日の巨人戦でも大城卓三のソロだった。これまで痛い目にあってきた教訓を生かした鈴木誠封じだった。 =敬称略= (専門委員)

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2021年7月4日のニュース