【内田雅也の追球】初白星と初黒星 阪神・アルカンタラが与えた衝撃、受けた教訓

[ 2021年5月28日 08:00 ]

交流戦   阪神4-6ロッテ ( 2021年5月27日    甲子園 )

<神・ロ>3回1死、佐々木朗は見逃し三振に倒れる(投手・アルカンタラ)(撮影・坂田 高浩)
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 巨人・桑田真澄がプロ初先発したのは35年前のきょうだった。1986(昭和61)年5月28日の甲子園。阪神はランディ・バースに投手のリッチ・ゲイルも本塁打し、8安打で4点、3回1/3でKOしている。

 俗に言う「プロの洗礼」だが、後にプロを感じたのは打席だったと明かした。3日前のプロ初登板は救援で打席がなかった。「ゲイルのカーブは見えなかった」と初打席から連続三振だった。

 PL学園時代、同僚の清原和博に次ぐ歴代2位の甲子園通算6本塁打と定評があった打撃で衝撃を受けたのだ。1年目、桑田はゲイルと3試合5打席対戦し、すべて三振を喫している。

 この夜、甲子園で「令和の怪物」ロッテ・佐々木朗希が先発した。大船渡高出2年目だが、桑田同様2試合目の登板だ。

 阪神は5回まで7安打し4点を奪った。2回裏は3連打に投手ラウル・アルカンタラも適時打。3、5回裏は苦手なクイック投法(手もとの計測で平均1秒30)を突き、足を絡めミスも誘った。

 ただ、より「プロ」を感じたのは打席ではなかったか。これまで2軍戦もDH制。アルカンタラに3、5回裏と続けて3球三振。すべて速球で手が出なかった。プロを肌で感じたことだろう。

 ところが、そのアルカンタラは6回表、2死無走者から与えた来日初の四球が「アリの一穴」となった。直後、短長打を浴びて同点。降板後、勝ち越し点が入って、自身は初黒星、佐々木朗に初勝利がついたのである。

 初回先頭打者に被弾後は快調だったが、どうも走者を背負ってからの投球が課題かもしれない。

 5回表、先頭の角中勝也に二塁打を浴びると、藤岡裕大、アデイニー・エチェバリアに続けて大きな外飛を打たれて失点。6回表2死後、四球を与えた後は、ブランドン・レアード、そして再び角中に、ともに高めに浮いた速球を続けて痛打された。

 制球がよく、投球テンポもいいアルカンタラは快調な時は、スイスイいくが、打たれだすと止まらない悪癖があるように見える。右肩の張りでいまは2軍調整中のジョー・ガンケルも来日1年目の昨年、同じ傾向だったのを思う。

 初登板だった前回16日巨人戦と合わせ、走者なしで32打数6安打(被打率・188)、走者ありで14打数6安打(同・429)となっている。

 昨年、韓国で最多20勝をあげた28歳の右腕は佐々木朗同様にプロ2試合目。判断するには早すぎるだろう。

 ただ、この夜に限っては、19歳の怪物に衝撃を与えた一方、教訓を受け取った。そういうことである。 =敬称略= (編集委員)

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2021年5月28日のニュース