野村克也さん 最期に体の上に置かれた“一番いい写真”のスポニチ本紙

[ 2021年2月12日 08:00 ]

野村克也さん一周忌

野村さんの死去を報じる20年2月12日付のスポニチ本紙最終版
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 【記者フリートーク 96、97年ヤクルト担当・福澤 孝哉】中庭の日だまりを見つめながら、楽天・克則コーチ夫人の有紀子さんは言った。「去年もこんなふうにいいお天気でした」。野村さんが亡くなって1年。都内の自宅には静かな時間が流れていた。

 亡くなった翌日の光景は鮮明に覚えている。ヤクルトのユニホーム姿で目を閉じていた野村さん。何よりも驚かされたのは、2つの新聞が体の上に置かれていたことだった。胸の上には評論家を務めていたスポーツ紙が、そしておなかの上にはスポニチがあった。

 「けさ全ての新聞の1面を見て、スポニチさんが一番いい写真でした。だから…」。驚く私に有紀子さんが理由を教えてくれた。その前夜、多くの写真の中からヤクルト監督時代の笑顔の1枚を選んだ。それが一番監督らしいと思ったからだ。生前の「一番うれしかったのはヤクルトの最初の優勝かな」という言葉が頭の片隅に残っていたのだと思う。

 デジタルの時代。ニュースも写真も動画もネットやスマホで簡単に見ることができる。ただ、形が残る「紙」だからこそ伝わる思いや温かみもあるのだ。

 線香をあげながら多くの思い出がよみがえってきた。これからも毎年2月11日が来ると、多くの野球人は野村監督の教えを思い出すのだろう。キャンプ地で汗を流しながら。(編集局次長)

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2021年2月12日のニュース