【内田雅也の追球】「やーぐまい」への発信

[ 2021年1月21日 08:00 ]

昨年2月の宜野座キャンプでユニホーム姿で打撃練習に取り組む大山
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 一年で最も寒いとされる大寒を迎えた20日、沖縄は「ムーチー」の日だった。現地で暮らす友人が教えてくれた。「ムーチービーサ」と呼ばれる、ムーチーの日は冷え込むことが多いが、22~23度まで気温が上がり、暖かかったそうだ。

 ムーチーは沖縄ことばで餅のこと。黒糖や紅芋を練り込んだ餅を月桃の葉で巻き、蒸して食べる。健康や長寿を祝い、祈る。鬼退治に、鉄釘入りのムーチーを食べさせたという民話に由来する。「鬼餅」伝説である。

 沖縄県が独自に緊急事態宣言を出し、県内でキャンプを張るプロ野球各球団は球場や施設に観客を入れずに開催する方針を決めた。新型コロナウイルスという鬼に対抗する手段である。スタンドの拍手や歓声はない。「プロ野球の正月」と言われる2月1日は静かなキャンプインとなる。

 阪神球団は「キャンプを楽しみにしていただいていたファンの皆さまには大変心苦しい限りです」とコメントを出した。

 監督や選手は見えないファンに向け、より一層のプロ意識、サービス精神が必要になる。

 「ミスター・プロ野球」長嶋茂雄が2009年に出した『野球は人生そのものだ』(日本経済新聞出版社)で<魅せる野球><サービス精神>の重要性を記している。

 <プロは意志力のはっきりした明快な言動をまず世に問うことから始まる。コメントだってプロらしいコメントをしなければいけない。フィールドのプレーは技術の表現、コメントもファンの楽しみの一つなのだ>。

 球場が静かな分だけ、選手たちはコメント発信でにぎわせてほしい。

 もう一つ、キャンプでは、きちんと背番号や名前の入った服装で練習すべきだ。ユニホームではないシャツを着て練習する姿が見られるが、なかには背番号も名前もないものがある。

 「お客さんの前に出る時はユニホームを着る。最低限、背番号をつけた格好で出るべき。ファンが見て、誰か分からないようではいけない」。阪神球団OBの方から聞いた話である。確かに、ファンの目線に立ち、プロの姿勢をとらえている。

 沖縄にはステイホームに近い言葉に「やーぐまい」がある。家にこもることを意味する。例年、多くのファンが楽しみにしているキャンプ巡りはできない。やーぐまいの今こそ、プロは発信力を発揮してほしいと願っている。 =敬称略= (編集委員)

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