日本プロスポーツの先陣を切ったプロ野球開幕 パは覚悟をにじませる賭けがあった

[ 2020年12月27日 11:00 ]

プロ野球開幕が決定した5月26日付スポニチ東京最終版
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 【紙面ニュースで振り返る2020】新型コロナウイルスに揺れた2020年。野球界は3月20日開幕から約3カ月遅らせた6月19日に開幕した。毎週のように行われる会議、日程プラン練り直しの中、日本のプロスポーツの先陣を切って開幕に踏み切り、紆余曲折の中で120試合を戦い切った。

 プロ野球は5月25日、オンラインで12球団代表者会議を開き、新型コロナウイルスの感染拡大により延期していた開幕日を6月19日に正式決定した。斉藤惇コミッショナーは、覚悟を持って口を開いた。「これは外出自粛などによる閉塞感に苦しんだ国民を勇気づけ、プロ野球以外のスポーツにも開催の指針を示すことができるのではないか」。5月25日、緊急事態宣言が全面解除されたその日。日本のリスタートを国民に分かりやすく宣言したのは紛れもなくプロ野球だった。

 フランチャイズが全国にわたるプロ野球。その地区ごとに感染状況も異なった。「6.19は無理じゃないか。7月以降にすべき」との声もあったが、自治体と密接な連絡を取り合い、理解を得た上で開幕に踏み切った。
 
 当面は無観客として公式戦の開幕だったが、それでも、時計の針をピタリと止めた日本社会にとって、プロ野球の開幕は大きな動機づけになった。サッカーのJ1は7月4日に再開。ゴルフツアーは無観客ながら、プロ野球の興行の進行具合を一つの指針として、その後の方針を練った。

 結果的にセ、パともに120試合を完走した。それでも、賭けとなる部分がなかったわけではない。一つが過密日程の中で組まれたパ・リーグのCS。2ステージが1ステージ制となり、最大4試合制と大幅に短縮された。それでも、CSを諦めたセ・リーグと比べ、全体の日程は極めてタイトになった。CS初戦予定日の11月14日の2日前までに、雨天中止が増えることにより全日程が消化できなければ、その時点での順位でCS進出チームを決めるとアグリーメント(申し合わせ事項)が改定されていた。確かにセよりパの方が本拠地とするドーム球場が多いという点はあったが、仮に天候不順が続けば、大きな不公平感を呼びかねない賭けだった。

 終わってみれば,ソフトバンクが日本シリーズで巨人を4連勝で下して4年連続日本一を達成した。パ・リーグは全日程とCSを消化し、1ステージながらCSを行えたことは、ペナントレースからぶっつけ本番となった巨人に比べて日本シリーズで大きなアドバンテージになったと考えられている。先が見えない戦いの中、パは一つの大きな賭けに勝った。保険が用意できない中で、覚悟をにじませる賭けでもあった。(特別取材班)

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