岩隈引退 周囲を気遣う優しい「クマさん」を忘れない

[ 2020年10月20日 09:00 ]

19年、巨人入団会見で原監督(左)とグータッチする岩隈
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 スーパースターでありながら、「優しいお父さん」という印象も残っている。岩隈が巨人入団1年目の19年春季キャンプ。入社1年目の記者にとっても初めての春季キャンプで、ありがたいことに、先輩記者とともに右腕と食事をさせていただく機会があった。まだ仕事が片付いておらず、失礼ながら、隅の席で慌てて原稿を書いていた。

 目の前には日米通算170勝のレジェンド右腕。初恋の人を前にしたかのように心拍数が上がっていた。本来、一番年下の記者が率先して食事の取り分けを行うべきだが、周りを見る余裕がなく、ひたすらパソコンとにらめっこ。サラダを取り分けようと手を伸ばすと、岩隈が「気にしないでいいよ。仕事頑張って」と記者の分まで取り分けてくれた。その姿は飾らずに自然体だった。

 何とか原稿を終わらせると、お腹を空かせた記者に「これも食べな」と言ってくれた。緊張で一言も話せなかった記者にも話を振ってくれ、私の面白くない話にも笑ってくれた。緊張感はいつの間にか消え、トレーニング論や配球論を興味深く聞かせてもらった。

 残念ながら巨人での1軍登板は実現しなかった。この2年間は思い通りではなかったはずだ。それでも黙々とジャイアンツ球場でトレーニングを行っていた。自分と闘いながら、若手にも惜しまずアドバイスを送っていた。周りには気を遣わせず、自らは気を遣う優しい「クマさん」の姿は忘れられない。(記者コラム・岡村 幸治)

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