トヨタ自動車・北村 “陰のMVP”も「僕が目立っているようではチームはダメ」

[ 2020年10月12日 08:00 ]

トヨタ自動車の北村祥治内野手
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 社会人野球のトヨタ自動車が11月22日から東京ドームで開幕する都市対抗野球大会出場を決めた。激戦の東海地区2次予選を4連勝で勝ち切っての第1代表。本戦出場に大きく貢献した3選手を、連日にわたり掲載する。第1回は北村祥治内野手(26)。

 敬意を込めて、あえて“陰のMVP”と称したい。「2番二塁」としてフル出場を果たした北村。攻守で申し分のない働きを見せた4試合だったが、評価する周囲の声に本人はかぶりを振った。

 「僕が目立っているようではチームはダメなんです。セカンドとしてはベースカバーまでしっかり走る、細かいポジショニングで何気なくヒット性の打球をさばく。そういうことをきっちりしていけば打撃は自ずとついてくるし、チームとしても上に上がっていけると思っています」

 チームとして、あるべき姿を示した。9月16日の東邦ガスとの初戦。3回1死満塁の先制機で迎えた第2打席が、存分にらしさを発揮した。相手先発・辻本に2球で追い込まれたが、北村に焦りはなかった。「逆にピッチャーが難しくなったと思いましたね」。持ち味の一つでもある駆け引きのうまさで、徐々にカウントを整えていく。最後はフルカウントから押し出し四球。「こっちにとっては大きい1点だし、向こうにとっては痛い1点になった」。待望の先制点から打線がつながり、3、4回の2イニングで7得点を奪い快勝した。Honda鈴鹿との第1代表決定戦でも、3回2死三塁から、左中間への先制二塁打。

 4試合で13打数4安打2打点、4つの四球を選んだこともさることながら、二つの勝利打点を挙げた勝負強さが際立った。

 2次予選が迫ってきた8月中旬。藤原航平監督からかけられた言葉で、自らの立ち位置を改めて気づかされた。「長打も大事だけど、右方向へ進塁打を打ったり、追い込まれて四球を取ったりしてくれることを期待している」。進むべき道のりが明確となり、迷いは完全に吹っ切れた。

 「もう一つレベルアップを、という中で自分の形が見えなくなっていました」

 星稜から亜大を経て、2016年に入社した。卓越した野球センスで、1年目から内野のレギュラーに定着。中堅から右への打撃、粘り強さが持ち味だったが、3年目以降はそこに長打力という新たなエッセンスを加えようとした。一流選手が集い激しい競争を繰り広げるトヨタにあって、技術の向上を目指すのはいわば当然のこと。ただ、皮肉なことに、野球選手としての向上心が、3、4年目の飛躍を阻む要因となっていた。「去年、一昨年と結果を残せず、今年に入ってから少しずつ考え方を変えている中で、監督に助言をいただいて…」。高みを見据え試行錯誤を繰り返してきたからこそ、たどり着いた新たなステージだった。北村は言う。

 「やるからには日本一を取りたい。世の中が難しい状況の中で、会社員として野球をやらせていただいている。感謝の気持ちを持って、会社の方々に元気、勇気を与えるのが僕らの使命。特別な年に日本一になれれば、これまでとは違う感情を味わえる。残り期間は短いですが、しっかり準備して臨みます」

 父・英治さんはかつて石動高(富山)の野球部監督を務めた経験を持ち、昨年6月に45歳の若さで他界した母方の叔父・島田恵一さんは星稜で野球に打ち込んだ。2歳年下の弟・拓己は17年ドラフト4位で巨人に入団。野球一家で生まれ育った“いぶし銀”が己の役割に徹し、4年ぶり2度目の頂点へチームを導く。

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