広島・上本 感涙の初サヨナラ打 2年前は“通訳”だったお立ち台で主役

[ 2020年8月29日 05:30 ]

セ・リーグ   広島4-3阪神 ( 2020年8月28日    マツダスタジアム )

<広・神(12)>9回1死一、二塁、サヨナラ打を放ち、鈴木誠(中央奥)らナインから手荒い祝福を受け、感無量の面持ちの上本(中央)(右は森下)(撮影・坂田 高浩)
Photo By スポニチ

 広島は28日の阪神戦に4―3で今季初のサヨナラ勝ちを飾った。守護神・フランスアが15試合ぶりの失点で追い付かれた9回、伏兵・上本崇司内野手(30)がプロ初となる歓喜のサヨナラ打を中越えに運んだ。先発・森下暢仁投手(23)は6勝目こそ逃したものの、7回を6安打2失点の力投だった。

 代役は、いつの間にか主役になった。グラウンドにできた歓喜の輪の中で、水浸しの上本がナインから手洗い祝福を受ける。今季初のサヨナラ劇勝を呼び込んだ立役者。達成感と悔しさが胸中で絡み合い、感極まって熱い涙がこぼれ落ちた。

 「悔しい思いが強かったので何とかしたかった。打った瞬間は、とにかく抜けてくれ…と。気持ちだけ。頑張ってきてよかった」

 同点の9回1死一、二塁。4番手・岩崎がカウント1―1から投じた外角チェンジアップを捉えると、飛球は前進守備を敷く中堅・近本の頭上を越えた。13年9月11日のヤクルト戦以来、2543日ぶりプロ2本目の適時打がV打となった。

 8年目の今春、地道な努力が結果となって表れた。対外試合11試合で8打数5安打7打点、打率・625。チームのムードメーカーでも、思慮深く遠慮がちな一面を持つ。殻を破ろうと、主力の鈴木誠や会沢に思い切って助言を求め、必死に汗を流した成果だった。

 「正直、不安しかない。でも、打席に立ってどれぐらいできるのか…という、自分への期待もあります」

 そうして立った野球人生2度目の本拠地お立ち台。「いや、もう最高。勝てたことが一番です」。前回18年6月28日の巨人戦では、逆転3ランを放った野間の“通訳”として登場。ファンの笑いを誘ったが、今回は正真正銘の声援を浴びた。

 「スタメンでなかなか結果が出ない中、いじられながらも必死でやっていたから、あの涙なんだと思う」

 佐々岡監督は、田中広の代役・遊撃手として先発指名した殊勲の30歳を称える。9回守備では1死一、三塁で梅野の強いゴロを処理した菊池涼からトスを受け、間に合わない一塁へ悪送球。「ここで打たないと取り返せない」。強い思いが7年ぶりの打点を生んだ。

 「こんなに試合に出るのは初めて。すごくいい経験をさせてもらっている。ワンプレーを必死にやります」

 プロ7年間で放った安打9本の伏兵が放ったまばゆい光。泥くさい全力プレーは逆襲を誓うチームの活力だ。(江尾 卓也)

 ▽上本の2年前のお立ち台 18年6月28日の巨人戦(マツダ)。5回、野間の逆転3ランで勝利。プロ初勝利の高橋昂と投打のヒーロー2人のお立ち台には、なぜかサングラスをかけた上本の姿も。インタビューに野間が意味不明な言葉をつぶやくと「最高で~す! 昂也が凄く頑張っていたので。(好調の要因は)毎日の積み重ねと、まぐれです」と“通訳”して笑いを誘った。

 《適時打は7年ぶり2本目》上本(広)はプロ8年目で初のサヨナラ打。打点は13年9月16日の巨人戦(マツダ)8回の代打押し出し四球以来7年ぶり3打点目。適時打は同年9月11日のヤクルト戦(神宮)2回に石川から打ったプロ初安打、初打点の先制中前打以来2543日ぶり2本目。どちらも決勝打となった。

続きを表示

この記事のフォト

2020年8月29日のニュース