阪神・中谷 失策取り返す“3倍返し”の一発 自主トレ支援の同期に最高の近況報告

[ 2020年8月13日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神7-6DeNA ( 2020年8月12日    横浜 )

<D・神(12)> 4回2死一、二塁、左越え3ランの中谷(左)はナインとエアタッチをかわす(撮影・大森 寛明)
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 阪神は12日のDeNA戦に逆転勝ちし5カードぶりの勝ち越しを決めた。プロ入り初の2番で先発起用された中谷将大外野手(27)が4回に左翼へ決勝の2号逆転3ラン。初回に犯した適時失策を取り返す「3倍返し弾」となった。チームは今季初の9連戦を連勝で締め3位に浮上した。

 倍返しを超える一発で“地獄”から脱した。中谷のフルスイングが、試合だけでなく自身の置かれた立場をひっくり返した。4回、1点差に詰め寄り、なおも2死一、二塁。浜口のチェンジアップをすくい上げた一撃は左翼席に飛び込む逆転3ラン。ダイヤモンドを力強く踏みしめる後ろ姿には、意地がにじんだ。

 「ヤギ(青柳)に迷惑かけて取り返すと言っていたので、取り返せて良かった」

 気合はいきなり空転した。初回の守備で佐野の右前打をファンブルする痛恨の適時失策で2点目を献上。取り返せるのは、バットでしかない。大砲が体現できる唯一の方法で後輩右腕の白星をももぎ取り、矢野監督も「状態もずっといい。(2番起用も)試合の流れで将大が打ったということも大きかった」と目を細めた。

 “同志”には恩返しの放物線だ。今年1月、先輩の伊藤隼らと姫路で行った自主トレで、10年ドラフト同期入団の岩本輝と穴田真規の両氏にも練習をサポートしてもらった。2軍でともに汗を流し甲子園での活躍を夢見た仲間。激励のこもったトスを打ち返し、飛躍を願うノックを全身でしっかり受け止めた。「穴田もガンちゃんも(自主トレに)“行くよ”って言ってくれてすごくうれしかったし、ありがたい。とにかく結果で返すしかない」。

 穴田氏とは昨季まで時間が合えば食事をともにし「落ち込んでいる時も、いつも、めちゃくちゃ笑って終われる」と本音を語り合える仲。ただ今年2月、同氏が所属する会社の社員旅行で沖縄キャンプを訪れた際は中谷自身が2軍スタートで再会はかなわず。コロナ禍で遅れた開幕も2軍で迎えたが、最高の結果でようやく「近況報告」できた。

 「今年は間違いなくチャンスは少ない」。危機感だけを胸に臨んだ今季は、オフから徹底的に体を追い込んだ。ウエートでは初めて100キロのベンチプレスを10回近く上げられるまで筋力アップ。「打撃しかない。打たないと試合に出られない」と代打で9打点を挙げ、つかんだチャンスをモノにした。ファームのコーチ陣にも「結果で恩返しできて良かった」と感謝した。

 「一打席一打席、後悔のないように。しっかり準備はできてるんで」。一振りが人生を左右するようになった。10年目の27歳は自力で、道を切り開く。 (遠藤 礼)

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