【内田雅也の追球】“詰めの甘さ”の対応策

[ 2026年5月14日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神2─4ヤクルト ( 2026年5月13日    神宮 )

<ヤ・神(8)>8回、押し出し死球で勝ち越しを許したモレッタ
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 神宮の冷たい雨と夜風が身にしみる敗戦だった。阪神は今季8度目となる逆転負けだった。

 敗戦投手は3番手の桐敷拓馬だった。1点リードの8回裏、安打、盗塁、二塁打で同点。さらに死球、1死後に安打されて満塁を残して降板となった。4番手のダウリ・モレッタが押し出し死球で決勝点を与え、犠飛で追加点も許した。

 桐敷が浴びた3安打、与えた死球はすべて2ストライクと追い込んでからだった。0ボール―2ストライクから3球目に浴びた安打も2本あった。つまり、“詰めの甘さ”があったわけだ。今季2ストライク後の成績も26打数9安打、被打率・346となった。

 将棋では、相手の王を追い詰めて勝負を決める段階(詰め)の判断や処理が不十分(甘い)と逆転で敗れてしまう。

 <優勢を意識した時が危ない>と十五世名人の大山康晴が本紙に書いている。1965(昭和40)年、南海(現ソフトバンク)―巨人の日本シリーズ第2戦(大阪)の観戦記『王将 球場を行く』にある。南海は4―0リードから長嶋茂雄への四球をきっかけに逆転負けを喫していた。<相手は劣勢を挽回するために死に物狂いでくる。少し挽回されると優位に立つ側は、まだ有利なのに自分の方が不利になったと錯覚してしまう。そしてあわてる。逆転劇はここに生まれる>。

 もちろん、阪神に油断があったわけではない。桐敷ばかりに責任があるわけではない。ただ、1点リードの8回、岩崎優とラファエル・ドリスを起用しなかったのはなぜだろう。

 岩崎の不調があるのではないか。4月26日以降この日まで18日間で、今月10日のDeNA戦(甲子園)の1試合しか登板していない。何か変調があるのだろう。

 敗戦後、監督・藤川球児は岩崎のコンディションを問う質問に「また、あさって(15日)からだね」とはぐらかし、答えなかった。
 先に桐敷で書いたが、チームとしても“詰めの甘さ”がある。わずか1点リードで終盤に逃げ切るのは確かに難しいが、必勝パターンの継投を確立できないままでいる。

 左アキレス腱断裂の重傷を負った石井大智の不在は確かにある。ただ、その穴を救援陣全員でカバーする姿勢で臨んだシーズンのはずだ。特効薬はなく、救世主もいない。全員が勇み立つ時である。 =敬称略=
 (編集委員)

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