侍ジャパン稲葉監督 五輪の年に新春“五問五答”、金に輝く結末を
さあ、悲願の金メダルへ。東京五輪に臨む侍ジャパンの稲葉篤紀監督(47)がスポニチ本紙の新春インタビューに応じた。五輪を制するために、5つのテーマに絞り重点的に質問。本番7カ月前である現時点での考え、指揮官の思いに迫った。(聞き手、構成・後藤 茂樹)
【Q.今年の漢字一字は? A.「結」】本紙の新春インタビューは3年連続。18年は試す学ぶ一年として「学」、19年はチームを創っていく一年として「創」を選んできた。そして20年は「結」としたためた。
「これまでも結束力を持ってやる、ということをずっとやってきました。日本で行われる五輪ですから。選手、コーチ、スタッフ、そして全国の皆さんと結束力を持って金メダルを狙いたい。この漢字には、締めくくり、全うする、という意味もあります。もちろん結果を出す、という意味も含めてです」
【Q.メンバーはプレミア12が土台? A.Yes】昨年11月のプレミア12では10年ぶり国際大会タイトルとなる優勝を飾った。東京五輪の選手選考への影響を認めた。
「基本的にはプレミアで出た選手は土台にしていきたい。ここからガラッと変えてとは考えていません。大会を通じて、ジャパンで勝つために、というのを分かってくれた。当然シーズン入っての調子もあるし、ケガも出てくる。その中で広い目で見ることも大事だと思っています」
プレミア12で28人だった選手枠が、東京五輪は24人に減る。スペシャリストの登用など大会前には「五輪にどうつなげるかは切り離して、この大会に勝つため」と話したが、大会を通じて得た手応えの大きさから「土台」に思いが変化した。
「それは大きい。約1カ月、選手の行動、言動、プレースタイルを見られた。今回の選手は本当に熱く、思いが強かった」
熱いことが大好き。日の丸への思い、代表への気持ちが、戦いの中で最後に大事になるという信念がある。
「選手がどれだけジャパンでやりたいか、五輪でやりたいか、これは価値観の違いなので。全然興味なくシーズン頑張りたいという考え方もある。でも興味ある選手なら、そこも目標とし、競い合うことでレベルアップにつながると思います」
【Q.投手枠は何人? A.12or11】「プレミア12で僕の傾向をコーチも分かってくれた。捉えられたり、いっぱいいっぱいというのを早めに判断し、どんどんと投手交代していたので。投手を一人でもほしい。12にするのか、11なのか。議論を重ね、人選も含めて考えなければいけないところ」
08年北京五輪は投手10人、04年アテネ五輪は11人だった。先発型が多いのか、野手の人数との兼ね合いなど、チーム全体に影響する大事な要素だ。
「10人では厳しいかなと考えてます。真夏で消耗も厳しく、国際大会の独特の緊張感の中。投手は最初から飛ばしていきますから」
捕手を2人か、3人とするのかなど。人数の制限がある中で、ユーティリティー性を持った選手が重宝される。
「投手12人なら、野手12人。捕手2人でも除けば10人。DHがいて、7人守ると控えは2人だけ。打順は変えるけど、ある程度出るレギュラーは決めないといけない」
【Q.4番は鈴木誠也で決まり? A.No】プレミア12では鈴木が全試合4番。打率・444、3本塁打、13打点に9得点の4部門でトップでベストナインとMVPに輝いた。不動の4番の座をつかんだかに見えた。
「もちろんプレミアは誠也が4番として頑張ってくれた。でもチーム内の競争、ジャパンに入りたい、この打順を打ちたい、先発をしたいという思い。その切磋琢磨(せっさたくま)をジャパンでも持ってもらいたい。例えば正尚(吉田)が悔しい思いをし、もう一度ジャパンで4番を打ちたいと。それは成長につながる。誠也も含め、そこを勝ち取ってもらいたいという思いを持っています」
抑えの山崎もプレミアは固定だったが、同じ立ち位置を求める。
「ソフトバンクの森君や、抑えをやっている選手はいる。そういう選手が出てきてくれると、また山崎もうかうかしていられなくなると思う。上のレベルでライバル意識を持って、成長するとやってほしい」
【Q.金メダルへ、参考とする監督は? A.星野、野村、原、栗山、梨田、ヒルマン】「日本ハムで僕はヒルマン、梨田さん、栗山さんと3人の監督の下でプレーしました。3人とも、監督と選手の距離感が近い。僕は年齢も選手寄りではあるし、どちらかと言うとそっちの方が良い。より選手に気持ち良くプレーしてもらうため、参考にしてます」
北京五輪では星野監督の下でプレーした。「星野さんは五輪という人数が少ない中、調子が悪い選手をミスしても使い続けていく強さ。中日時代もそうだったと聞きます。今回のプレミア12なら、例えば勇人(坂本)。調子が良くない中、でもこのチームにとっては勇人が復調してくれるというのが特に大事だと思っていました」
WBCでは原監督、ヤクルト時代は野村監督と名将に恵まれた。
「原監督のどんどん動かしていく野球。あとは野村監督のメディアをうまく使うところなど。本当にいろんな監督と話して、この2年間学ばせてもらった。そうした多くの監督のいいところを、出していきたい」
≪北京の屈辱を晴らすため≫稲葉監督は今年8月3日、東京五輪期間中に48歳を迎える年男として20年に臨む。選手として臨んだ前回08年北京五輪も36歳で年男だったが屈辱の4位に終わり、メダルにさえ手が届かなかった。「もう悔しさしかない、本当に。今回リベンジの機会を頂いた。もうそこしかない」と語った。当時のことはメンバー編成、試合内容など、今でも振り返ることが多い。五輪のリベンジは五輪で、と就任以来繰り返してきた舞台に立つ。
≪金メダル獲り 野球人口増へ≫稲葉監督は金メダルの先に、野球の振興、普及を大きく見据えている。「野球に興味を持ってもらえるチャンスだと思う。競技人口を少しでも増やす。なかなか難しいんですけど、そこもしっかり金メダルを獲って、というところですよね」と話した。就任当初から野球離れへの危機感は強い。野球は次回24年パリ五輪で再び消滅するが「野球をする子供たちを増やす、その使命を感じています」と大局観を抱く。
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