吉田輝星のデビュー戦勝利は「脚本家」栗山監督なくしては語れない

[ 2019年6月13日 11:30 ]

<日・広>ウイニングボールを手に栗山監督と握手を交わす吉田輝(撮影・高橋茂夫)
Photo By スポニチ

 肝の据わったルーキーだ。日本ハムのドラフト1位・吉田輝星が12日の広島戦で5回1失点に抑え、デビュー戦をプロ初勝利で飾った。2軍で5回を投げていなかったにもかかわらず、勝利投手の権利を得たことが驚き。さらに、初回1死満塁のピンチを切り抜けたことも驚きだった。

 一気に崩れてもおかしくない場面。本人いわく、「ストレートで押して、打たれたらしようがない。という気持ちだった」。その言葉通り、5番・西川を3球三振。オール直球勝負だった。6番・磯村もこの日最速の147キロ直球で追い込み、最後はカーブで緩急を使って三ゴロに仕留めた。追い詰められても威風堂々としていた。“打てるものなら、打ってみろ”である。

 リリースポイントが定まらない序盤。しかも、本拠地の札幌ドームはマウンドが硬い。普段よりも下半身を使えずに投げているように見え、スライダーも抜けていた。それでも力でねじ伏せた。さすが、甲子園準優勝投手。場数を踏んでいる。

 くしくも海の向こうでも、「日本ハムVS広島」の戦いが繰り広げられた。大谷と前田の今季初対決だ。初回、大谷がいきなり先制アーチを放った。低めのチェンジアップを空振りして追い込まれたが、2球続いた低めのボール球だったチェンジアップを見極め、甘く入ったスライダーを完璧に仕留めた。

 日本ハムの栗山監督はこの試合をテレビで見届けていた。教え子である大谷が、広島の元エースである前田に強烈な一撃を見舞った同じ日。かつての大谷と同じドラフト1位の黄金ルーキーが、デビュー戦で広島の現エース・大瀬良と投げ合うことになった。試合前にうれしそうに話した。「偶然だけど、相手が大瀬良で今日も朝、マエケンと(大谷)の対決を見てたけど、いろんなことがあったなぁと思った。いい選手を見ていくのは重要なこと。相手も含めて、こういう舞台であることは何か意味があると信じている」。18歳は、その大瀬良を相手に白星をつかんだ。今後の飛躍へ、意味の大きいデビュー戦。栗山監督の狙い通りである。

 そもそも、デビュー直前の2軍戦で打ち込まれていた新人投手を1軍で投げさせたのも驚きだった。その理由が「ストレートにこだわって戦う姿勢を崩さなかった」。吉田輝も最大の武器である直球を投げ続けた。84球中、67球が直球。実に80%に達し、5球に4球が直球である。しかも初対戦とはいえ、広島の強力打線を相手にしてだ。かつての大谷同様に、吉田輝の力を信じて疑わない栗山監督。だから、筋書きのないドラマは「筋書き以上のドラマ」となった。(記者コラム・飯塚 荒太)

続きを表示

2019年6月13日のニュース