阪神・鳥谷、意地の三塁打 思わずガッツポーズ「やっちゃいました」

[ 2019年3月30日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神2―1ヤクルト ( 2019年3月29日    京セラD )

11回無死、鳥谷は右越えに三塁打を放つ(撮影・坂田 高浩)
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 プロ野球はセ・パ両リーグが29日にそろって開幕。阪神はヤクルト戦(京セラドーム大阪)に2―1でサヨナラ勝ちした。延長11回に代打出場した鳥谷敬内野手(37)が右翼フェンス直撃の三塁打を放ち、相手暴投で決着。プロ16年目で初めて開幕戦ベンチスタートとなった男の意地の一撃で、矢野阪神1年目は最高のスタートを切った。

 ワイルドピッチでサヨナラ勝ち…。お立ち台には誰が上がる? 延長11回の死闘を見届けた虎党が身を乗り出してグラウンドを見つめるなか、背番号「1」がベンチから颯爽(さっそう)と飛び出した。その瞬間、耳をふさごうかと思うほどの大歓声がこだました。矢野阪神初陣の主役は、鳥谷だ。

 「なかなか点が入らない中でたくさんのファンの皆様が最後まで残ってくれていたので、何とか塁に出たいという気持ちが結果につながったと思います」

 1―1で迎えた延長11回。先頭で代打出場すると、ヤクルト守護神・石山の147キロを叩いた。あと一伸びでサヨナラアーチという大飛球は右翼フェンスに直撃し、鳥谷は三塁に到達。代走の江越にあとを託すと、1死後の近本の打席で暴投によるサヨナラ勝ち。手荒い祝福を受けたのは生還した江越でも打席の近本でもなく、ベンチから飛び出した鳥谷だった。

 「スリーベースを打った時は(三塁ベースコーチの)藤本さんが駆け寄ってくる感じで…。ベンチを見ても、皆が出てきてくれたので、(ガッツポーズを)自然にやっちゃいました(笑)」

 クールな男が感情を前面に出した。三塁到達時に両手をパン!と叩き、ベンチで迎え入れてくれた仲間と満面の笑みでハイタッチ。お立ち台でもそうだ。「ほんとはホームランで決めたらカッコ良かったんですけど…」と自虐気味に嘆いて一笑い起こすと、「三塁打の後も代走出されていますし、ちょっと恥ずかしい感じはします」と言ってまた一笑い。なかなか見れない鳥谷の砕けた笑顔に球場が幸せに包まれた。

 矢野イズムを感じるシーンだった。前日のミーティング。指揮官は「お立ち台で自分なりのメッセージを出そう」と選手に投げかけた。かねて掲げている「ファンを楽しませる」方針を再確認した翌日にベテランの鳥谷が体現。お立ち台を終えると右翼のポジションまで走ってスタンドに一例し、最後は一塁側最前列のファンとハイタッチだ。

 「個人的には、しっかりチャンスを活かして、もう1回ショートのポジションに立てるように頑張りたい」

 開幕スタメンこそ譲っても「遊撃奪還」というモチベーションは変わっていない。記念すべき矢野阪神初戦は、虎党にとってたまらない、熱すぎる結末だった。(巻木 周平)

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2019年3月30日のニュース