巨人・吉川尚 母にささげる松坂撃ち1号 中学3年時「野球やめたい」と相談

[ 2018年5月14日 08:15 ]

セ・リーグ   巨人9―5中日 ( 2018年5月13日    東京D )

<巨・中>初回無死一塁、吉川尚は右越えにプロ入り初本塁打となる先制2ランを放つ
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 一生忘れない――。巨人の吉川尚輝内野手(23)が13日、中日の松坂大輔投手(37)からプロ初本塁打を放った。初回に先制の右越え1号2ラン。相手の出はなをくじく一発は、そのまま決勝打となった。松坂からプロ1号を打ったのは、04年の古城茂幸(日本ハム)以来3人目。プロ2年目でレギュラーに定着した新鋭の記念すべきアーチで、今季最多タイの貯金3とした。

 味わったことのない手応えが両手に残った。飛距離十分。吉川尚はバットを放り投げ駆けだした。松坂から放ったプロ初アーチ。プロ通算41試合、167打席目に飛び出した。

 「初めての感触。打った瞬間いったと思った。一生忘れないと思う」。2番打者としての仕事をするつもりだった。初回無死一塁。犠打のサインは出なかった。「引っ張れる球を打とう」。2球目のカットボールが内角に来たところを逃さず、進塁打をイメージして強く叩いた。最高の結果を生む。推定120メートル。東京ドームの右翼席上段に飛び込む特大の先制2ランだった。

 平成7年生まれ。松坂が99年に東京ドームでデビューしたときは4歳だった。14歳差で「平成の怪物」と称された右腕のことは「メジャーリーガーの松坂さんしか分からないです」と話す。雲の上以上の存在だった。日米通算165勝の大物投手からの初アーチに「凄い投手から打てたのはうれしいです」と何度も表情を崩した。

 この日は母の日。「何も(プレゼント)してない。したことがないです」と照れるが、母・陽子さん(53)の一言がなければ、この場所に立っていなかった。中学3年のとき、野球と勉強の両立に悩み、人生で1度だけ「野球をやめたい」と言ったことがある。

 元甲子園球児だった父・好さん(59)ではなく、母に相談を持ちかけた。「あなたは良いものを持っているんだから続けてみたら?」。背中を大きく押され、思いとどまった。その後、父の母校・市岐阜商の試合を見学した。そこでプレーする高校球児を見て「自分もお父さんみたいに甲子園に出たい」とやる気を持ち直した。

 4回には岡本にも3ランが飛び出し、初のアベックアーチとなった。今季は若手の台頭がチームを活性化させている。その象徴であり、開幕からスタメン出場を続ける2人がそろって活躍。高橋監督は「若い2人に本塁打が出たのは、チームとしても非常に良かった」と目を細めた。

 初めてのホームランボール。吉川尚は「両親にあげたいと思います」と大事そうにバッグにしまった。松坂からのプロ1号。大好きな野球を続けさせてもらった母への、最高のプレゼントとなった。 (池田 翔太郎)

 《吉川 尚輝(よしかわ・なおき)》

 ★生まれ&サイズ 1995年(平7)2月8日生まれ、岐阜県羽島市出身の23歳。1メートル77、79キロ。

 ★投打と快足 右投げ左打ち。50メートル5秒7。

 ★球歴 中学時代は父・好さんが監督の羽島フジボーイズに所属。中京3年時の夏の県大会は準決勝で敗退。中京学院大では2、4年春に首位打者に輝き、4年時には大学選手権で初出場初優勝。16年ドラフト1位で巨人に入団した。

 ★憧れの選手 他球団では中京学院大の先輩でもある広島・菊池。俊足を生かした守備範囲の広さは菊池とも比較される。

 ★おそろい 岡本とともにアンダーアーマーと契約しており、同じオレンジ色のアップシューズを履いている。

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