イチロー ドキドキ指導者1勝 でも監督はまだご免?

[ 2018年5月14日 05:30 ]

ア・リーグ   マリナーズ9―5タイガース(第2試合) ( 2018年5月12日    デトロイト )

<タイガース・マリナーズ>コーチとしてベンチ入りし、試合前に選手らと話すイチロー(AP)
Photo By AP

 マリナーズのイチロー会長付特別補佐(44)が12日(日本時間13日)、タイガースとのダブルヘッダーで「コーチデビュー」を果たした。大リーグで選手経験のある日本人では、コーチとして公式戦にベンチ入りするのは初めて。ベンチコーチ役として、スタメン表の記入などを初体験し、日米通算4367安打のレジェンドは緊張しきりだった。

 第2試合の5回。タイガースのロン・ガーデンハイアー監督がカルロス・トーレス球審から退場処分を受けると、イチロー臨時ベンチコーチが動いた。選手への指示ではない。「お願いだから退場にはならないで」。マニー・アクタ監督代行への懇願。自身に監督の役が回ってきてしまうからだ。

 「ああいう性格だから、言っておいても心配でした。その緊張感はありました」。アクタ代行は血気盛んなドミニカン。イチローはインディアンスの監督を務めていた10年9月に自身の内野安打をめぐって猛抗議し、退場処分を受けたのを目の当たりにしていた。当のアクタ代行は「普通、他の人は監督をやりたがるが、イチローだけは違うようだ」と笑って振り返った。

 11、12日はスコット・サービス監督が長女の卒業式出席のため不在。首脳陣の1枠が空き、今季プレーしないイチローが最後に出場した2日以来のベンチ入りとなった。11日が悪天候で中止となり、ダブルヘッダーが組まれたこの日限定の役割。第1試合の前には普段通り練習を行ったが、そこからが違った。

 大リーグを経験した日本選手では初のコーチとしてのベンチ入りに、2試合ともメンバー表を記入し、第2試合の前にはメンバー表交換にグラウンドへ登場した。「結構やらなきゃいけないことがあって。選手交代を全部書かなきゃいけない」。ベンチ内に張った両軍メンバー表の出場済み選手に黒丸印を付け「意識していても結構忘れることもある。余裕はないですよ」と苦笑した。

 選手として自身がしてこなかった験担ぎも見せた。メンバー表記入の際に「1試合目に負けたから、2試合目は筆記体にしました。(ペンの)カラーも変えて」。気遣いが通じて第2試合は快勝。1勝1敗で終えた。

 イチローは「2つ負けたら、絶対に僕のせいにされるから良かった」と胸をなで下ろした。次戦以降は再び、試合中はベンチ裏でトレーニングしながら戦況を見守る。当面の目標は来季の日本での開幕戦でのプレーだ。それでも「現場復帰」の一日に、ファンは未来のイチロー監督の姿も期待してしまう。(デトロイト・笹田 幸嗣通信員)

 ▽ベンチコーチ 監督の補佐役として戦術面で助言したり、選手と指揮官のパイプ役になったりするのが主な仕事。日本のヘッドコーチに近い役割。監督経験者や次期監督候補が務めることが多い。

続きを表示

2018年5月14日のニュース