マエケン破談危機あった ドジャース異例8年契約の裏側

[ 2016年1月9日 05:30 ]

ドジャースに入団が決まり、入団会見で18番のユニホームに袖を通し、満面の笑みを見せる前田健

 ドジャースは7日(日本時間8日)、広島からポスティングシステムでメジャー移籍を目指していた前田健太投手(27)と8年契約を結んだことを発表し、本拠地で入団会見を開いた。日本選手最長となった契約期間に始まり、契約内容は異例ずくめ。契約金と年俸の総額が2500万ドル(約29億5000万円)と低水準な一方、出来高が最大8120万ドル(約95億8200万円)も付けられた。内幕には、交渉過程での破談危機があった。

 ついにドジャーブルーの、背番号18のユニホームに袖を通した。はにかんだ前田健は、質疑応答に移る前に自ら切り出した。「契約内容がさまざまな臆測を呼んでいますが、一部報道通り身体検査でイレギュラーな点がありました」。会見は異例の言葉から始まった。

 8年もの長期契約。契約金プラス基本年俸の年平均312万5000ドル(約3億6900万円)は、メジャー平均年俸(約400万ドル)より安い。一方で法外にも映る出来高。「イレギュラーな点」の詳細は明かさなかったが、身体検査で前田健の右肘には問題が見つかっていた。いびつな契約内容は、右肘の状態と、それをめぐる日米間の認識の差が生んだ。

 ド軍のアンドルー・フリードマン編成本部長は「検査結果を聞いた直後は別の選手の獲得に動こうと思った」と話した。交渉は白紙に戻り、撤退に傾いた。通常、身体検査に問題があれば別の医師にセカンド・オピニオンを求めるが、関係者によると今回は画像を基に5人の医師に診断を仰ぐ“フィフス・オピニオン”に至った。「OK」は誰からも出なかった。前田健もブログで「メジャーに挑戦できないんじゃないかと思うこともありました」と述懐する。

 日本では前年好成績を残した選手の獲得へ、身体検査を重視することは少ない。大リーグでは98年に正式契約前の身体検査が制度化され、故障のリスクなどが調べられる。特にド軍は14年オフに巨額契約を結んだ右腕マッカーシーが、昨年4月に右肘じん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)で離脱したばかり。このオフは岩隈と3年契約で合意した後に、身体検査の結果で破談した。

 日本選手は松坂、ダルビッシュら蓄積疲労から肘を痛めての長期離脱が続く。一方、トミー・ジョン手術は全治1年以上を要しながらも、約2年を経て球速や球質が向上するケースがみられ、復帰後の活躍の可能性は十分ある。「仮に故障離脱しても、8年契約という長さがある。その後、彼が我々を助けてくれる」と同編成本部長。保証額よりメジャーで投げることを優先した前田健側と、リスクは少しでも抑えたいド軍。交渉期限1日前の契約発表だった。

 13、14年に右肘の違和感で大事を取ることがあった前田健は「一度も長期離脱はないし、昨年もフルに投げた。これから先もずっと投げていく自信はある」と話した。出来高は毎年32試合に先発し、200投球回に達すれば、8年で1億620万ドル(約125億3200万円)を得られる設定。「200イニングはしっかり投げたい」。過去4度の大台到達の実績を背景に、満額を見据えた。

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2016年1月9日のニュース