松田 ソフトB残留の舞台裏 示されたFA制度の課題

[ 2016年1月9日 10:35 ]

グアム自主トレ出発前、柳田から「メジャー行かんかったっすね?」と声をかけられ笑顔の松田

 1月6日。グアム自主トレへ出発する福岡空港で柳田から「メジャー行かんかったっすね?」と新年のあいさつを受けたソフトバンク・松田は、苦笑いした。吹っ切れたとも、そうでないとも取れるほほ笑みだった。

 とにかく、圧倒的に時間が足りなかった。昨年12月24日、海外フリーエージェント(FA)宣言し、メジャー挑戦を目指したソフトバンク・松田は残留会見を行い、夢は胸にしまいこんだ。

 ホームランを打つたび「熱男」と叫び、選手会長としてチームを引っ張り、連続日本一という頂に達した。2年の複数年契約が切れるオフ。球団とは当たり前のように代理人を通じ、残留交渉は行っていた。ただ、海の向こうでプレーするなど考えたこともなかった。一気に火が付いたのは日本シリーズ後、パドレスが獲得調査を行うとの報道を目にしてからだ。

 実際、動き始めると壁にぶつかる。来日中のパドレスの幹部とは直接交渉したが「なぜショートをやらないんだ?」と問いかけられた。さらにそれ以上、メジャーの条件を聞くには旧知の日本の代理人ではなく、海の向こうの見知らぬ外国人と手を組む必要があった。三塁手としてどこまで通用するのか…漠然とした夢を描いた背番号5に対し、市場に出された「松田宣浩」は三塁だけではなく、二塁、遊撃、外野も守れる万能野手。選択肢が多い方が、より有利な条件を引き出せる。ただ、それは描いたものとは違った。心の炎は少しずつ、消えていった。

 準備不足だったとの声や一部ではつり上げの材料に使ったのではないかとの批判もあった。ただ、松田は無心でチームのために戦い、手にした権利をどうしようか考えた。その結果、海を渡るという決断まではたどり着けなかった。シーズン中にメジャー挑戦を考え、水面下で着々と準備を進めることが悪いとは思わないが、まだ、このFA制度には改善する余地が山ほど、ありそうだ。

 フリーエージェント。アメリカでは「なる」ものだが、日本ではまだ「する」もの。宣言残留そのものを認めない球団もあるなど、宣言残留=悪と見られる節もある。代理人はなぜ、アメリカでの実績がなければいけないのか。松田により示された多くの課題は今後、日米間で検討する意味のあるものだと思う。(福浦 健太郎)

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2016年1月9日のニュース