ライアン小川 新人が10勝リーグ一番乗り 沢村賞獲得の99年上原以来

[ 2013年7月14日 06:00 ]

<ヤ・広>初回1死、菊池を三振に打ちとるヤクルト・小川

セ・リーグ ヤクルト8-3広島

(7月13日 神宮)
 ヤクルトのドラフト2位右腕・小川泰弘投手(23)が13日、広島戦で7回2/3を3失点に抑え、セ・リーグ10勝一番乗りを果たした。セの新人が最初に2桁勝利に到達するのは、1999年の巨人・上原浩治投手(38=現レッドソックス)以来14年ぶり。チームの新人では1959年の北川芳男(当時国鉄)の7月26日を抜く、最速の10勝到達となった。自身5連勝。「和製ライアン」と呼ばれるルーキーは勝ち続ける。

 そこだけ空気が違うようだ。不快指数83。誰もが不快に感じる蒸し暑さのマウンドで、小川の周りだけはまさに「ライアン・ワールド」。それが快挙につながった。

 「やるべきことをやって点を取ってくれるから勝てている。打線に感謝したい。目標を高く設定していたけど、この結果は予想していなかった」

 笑顔はない。いつもの小川だ。ただ、その無表情にだまされてはいけない。新人でセ・リーグ10勝一番乗り。両リーグ通じて99年の巨人・上原以来14年ぶりで「1試合に全力を尽くした結果。単純にうれしい」。小川監督と握手したときに少しだけ笑みがこぼれた。

 まさにゾーンに入った投球だった。初回。2死から連打で先制点を許した。2回にも下位打線に2安打。ベンチに戻ってくると「少し体が(一塁方向へ)倒れているぞ」と控え捕手の新田から指摘された。蒸し暑さが微妙に体の感覚を狂わせたのが要因。すぐ修正し、体の左側で壁をつくることを意識した。球の出どころが見えづらい本来のフォームに微調整。3回から7回まで1安打に抑え、8回途中3失点でマウンドを降りた。「蒸し暑さで大変だったけど、10勝は凄いね」。小川監督も熱い116球を称えた。

 高い修正能力と投球技術。その根底には「心の強さ」がある。荒木投手コーチは言った。「周りに惑わされない。やるべきことは人を待たせてもやり抜く。それが投球に出ている」。練習は全体メニューに加え、独自のメニューをこなす。終わらなければ、次のことに移らない。「いつも僕が待たされていますよ」と荒木コーチ。そんな小川は6月22日の広島戦(マツダ)で完封し、周囲に「つかみました」と伝えたという。軸足に重心が乗っていく感覚をつかみ、ノーラン・ライアンに学んだ左足を高く上げる独特のフォームが完成形に近づいた。そこで猛暑に入ると、ランニング量を増やした。オフの翌日に200メートルダッシュを12~14本、翌々日は100メートルダッシュを20本。創価大時代と同じ量に変え、完成度を高め、この猛暑を耐え抜くためだった。

 「勝ててるのはフォームの安定が一番。軸がしっかりつくれて、リリースで押し込めてる」。序盤にフォームを微調整できたのも、2桁勝利一番乗りも、やるべきことをやった結果だった。次回の登板は20日の神宮、球宴第2戦だ。「見て勉強してレベルアップにつなげたいですね」。あくなき向上心。セのハーラートップを行く小川は堂々と夢の大舞台に立つ。

 ≪チームでは59年北川超え最速≫新人の小川(ヤ)がセ最速の10勝。チーム新人の2桁勝利は04年川島以来9人目だが、59年北川(当時国鉄)の7月26日を抜く最速の10勝到達になった。また、新人のリーグ10勝一番乗りは99年セ、パで上原(巨=両リーグ一番乗り)、松坂(西)が記録して以来14年ぶりで球団初。

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2013年7月14日のニュース