石井 いぶし銀千金打!独走支えるトライアウト入団の苦労人

[ 2012年8月11日 06:00 ]

<巨・ヤ>お立ち台でピカチュウ(左)、ジャビットとポーズを決める巨人・石井

セ・リーグ 巨人4-3ヤクルト

(8月11日 東京D)
 止まらない。巨人が今季3度目の6連勝だ。10日、本拠地にヤクルトを迎え同点の7回2死一、二塁、代打・石井義人内野手(34)が決勝の右前打。いぶし銀の働きでチームに白星をもたらした。2番手で1/3回を投げたルーキーの田原誠次投手(22)が、プロ初勝利を挙げた前日に続いて2日連続の白星。巨人では50年ぶりの記録となった。この勢い、もうどうにも止まらない。

 一度は地獄を見た男の、恩返しの一振りが試合を決した。同点に追いつかれた直後の7回。2死一、二塁のチャンスで、原監督は迷わず「代打・石井」を告げた。信頼に応える決勝打が右前へ抜けていく。移籍後初のお立ち台。4万を超える大観衆の声援に応えたプロ16年目の34歳は、「自分で何言っているのか分からなかったよ…」と新人のように照れた。

 増渕に速球系を4球続けられ、1ボール2ストライクと追い込まれていた。「そろそろ変化球かなと思ったけど。直球しか待っていなかった。変化球が来たらごめんなさいでした」。5球目は高めに外れた143キロ直球。狙い通り強引に叩いた。「そこに直球が来て、はじき返せた。まだ自分にもツキやチャンスがあるのかな」と笑った。

 この割り切りと集中力が、ここぞの一打を呼ぶ。今季先発では2試合で6打数無安打も、代打では13打数6安打の打率・462。秘けつを「無心」と言い切る。「余計なことは何も考えず、その打席だけに集中する」。打席の最も投手寄りに立ち、球界最軽量級の870グラムのバットで高速スイングスピードを生み出す。直球には絶対の自信を持ち、変化球は曲がりっぱなを捉える。まさにいぶし銀。メンタル、技術とも職人の域に達している。

 昨オフに西武を戦力外となりトライアウトを経て入団。ここまで2度の腰痛にも苦しんだ。「ケガで迷惑を掛けた。巨人に拾ってもらい感謝しているし、もっと貢献したい」。前夜は午前3時30分から、ロンドン五輪のなでしこジャパンの決勝戦に見入った。「それで気合も入りました。寝たのは6時でしたが」と、また笑った。独走巨人を、こんなほほ笑みの仕事人が脇から支えている。

 ▼巨人・原監督(代打決勝打の石井について)勝負強さがいいところで出た。貢献ポイントは非常に大きい。左の代打の層が厚くない中で、いい力を出している。

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2012年8月11日のニュース