亀がウサギを追い越した…雨でも仁王立ちの高嶋監督

[ 2010年3月23日 19:31 ]

 23日の第82回選抜高校野球大会1回戦で智弁和歌山高(和歌山)が勝ち、高嶋仁監督(63)は甲子園大会で監督通算59勝の単独1位となった。激しい雨の中、いつものようにベンチ前で仁王立ちし、びしょぬれ姿で「甲子園に出て勝ってくれた選手や先輩に感謝したい」と日に焼けた顔をほころばせた。

 58勝で並んでいたPL学園高(大阪)の中村順司元監督と比べ「中村さんはウサギ。僕は亀」と言う。智弁学園高(奈良)で7勝を挙げ、1980年から智弁和歌山高を率いて31年目。亀がウサギを追い越した。
 智弁和歌山高では85年春に甲子園に初出場し、そこから5回連続で初戦敗退。バックネット裏の常連客に「よう来たなあ。また負けに来たんかあ」とやじられた。悔しかったが「なるほど」とも思えた。打倒・箕島高(和歌山)しか頭になく、甲子園で勝つための練習をしていなかったと気付いた。93年夏、初めてベンチ前で立って采配を振るい、勝った。それ以来、座れなくなった。
 94年の選抜大会で初優勝した際、海星高(長崎)で選手として甲子園に出場した時も来なかった両親が初めて応援に来た。父庫吉さんはその後亡くなり、母茂子さんは97年夏の全国制覇を見届けて亡くなった。決して裕福ではない家庭で大学まで野球を続けさせてくれた両親に「少しは恩返しできたのかな」と首をかしげる。
 智弁和歌山高での最初の契約は3年。それが終わったら長崎に帰るはずが、もう定年の年も超えた。「次の目標なんてない。何とか選手を絞って甲子園に連れていくこと」。「亀」はまだまだ歩みを止めない。

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2010年3月23日のニュース