45年ぶりの校歌…向陽、新たな伝説へ“金星”発進!

[ 2010年3月23日 06:00 ]

初戦を突破し喜びを爆発させる向陽ナイン

 【センバツ第2日】新装された甲子園に懐かしい校歌が響き渡った。21世紀枠で36年ぶり出場の向陽(和歌山)はエース藤田達也投手(3年)が好投。昨秋中国大会覇者の開星(島根)を2―1で下して大金星を挙げた。前身の海草中時代に優勝2度、準優勝1度の古豪にとって45年ぶりの白星となった。

 見えない力が向陽ナインを後押しした。古豪復活を鮮やかに印象づける1勝で初戦突破。45年ぶりに流れる校歌は、超満員のアルプス席でも大合唱だ。
 「楽しく投げられたし言うことなし。100点満点。嶋さんと同じマウンドに立てたことだけでも光栄。そこで勝利することができたのも、嶋さんのおかげだと思います」。立役者はエース右腕の藤田だ。直球は自己最速の139キロを記録。テンポ良く追い込んで、勝負どころではスライダーで三振を奪った。魂のこもった122球で6安打1失点完投。OBで伝説の大投手・嶋清一さんが立った同じマウンドで、堂々の投球を披露した。
 39年夏に準決勝、決勝で無安打無得点を記録した大投手に少しでも近づくことが藤田の目標だ。石谷監督の勧めもあって、嶋さんの写真を参考にして体重移動の練習を繰り返してきた。24歳の若さで戦死した悲運の大先輩の伝記を何度も読み返し、この瞬間を思い描いてきた。海草中と向陽の頭文字である「K」をユニホームの袖に入れ、39年当時と同じデザインのストッキングを着用。36年ぶりに戻ってきたひのき舞台は21世紀枠での出場だったが、臆することなく優勝候補の一角相手に堂々と渡り合い、そして勝った。
 同校OBの石谷監督は、自身が出場した69年センバツは初戦敗退しているだけに「新しい歴史をつくった、選手たちにはそういう気持ちがあると思う」と感慨深げだ。2回戦は36年前に敗れた強豪・日大三(東京)が相手だが西岡主将は「きょうみたいな戦いができれば」と自信をのぞかせた。36年前の先輩たちのリベンジの先には、嶋清一さんの命日「3・29」の準々決勝が控えている。

 <ネット裏のOBも「よっしゃあ」>バックネット裏で勝利を見届けたOBの古角(こすみ)俊郎さん(88)は「よっしゃあ」と立ち上がった。「ここ甲子園には嶋をはじめ、多くの先人の魂が宿っている。後輩を支えてくれたな」。海草中時代の1939年(昭14)夏に全試合完封で優勝、殿堂入りしたエース故・嶋清一さんの同期でただ一人の生き残りだ。「甲子園は何が起きるか分からない。特に初戦は怖い。自分たちもそうだった」と下馬評を覆す勝利で初戦突破を果たした後輩たちを称えていた。

  ◆海草中の快挙 1915年に学校創立。野球部は29年春に初出場、同年夏は準優勝を飾った。その後、殿堂入りした伝説の大投手・嶋清一を擁した37年夏から5季連続出場。嶋は39年夏に5試合連続完封勝利で優勝。準決勝、決勝の2試合連続無安打無得点の記録は前人未到の記録となっている。チームは翌40年夏も優勝して夏連覇。海草中時代に春夏通算17度出場し、優勝2度、準優勝1度の輝かしい歴史を持つ。48年に現校名となって以降は春に4度出場しているが、65年の1回戦で高鍋に勝って以来、白星から遠ざかっていた。

  <21世紀枠9校目の初戦突破>01年から採用された21世紀枠は今年で10年目。向陽で22校目だが、初戦突破は01年・宜野座(沖縄)、02年・鵡川(北海道)、05年・一迫商(宮城)、07年都城泉ケ丘(宮崎)、08年・成章(愛知)、安房(千葉)、華陵(山口)、09年・利府(宮城)に続いて9校目。最高成績は宜野座と利府の4強。大会5日の第3試合に23校目の川島(徳島)が登場する。

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2010年3月23日のニュース