日本代表　負傷者続出の暗雲

日の丸を掲げる湘南・町野（撮影・村上　大輔）
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　カタールワールドカップへ臨む26人が発表され、ほぼ大方の予想どおりで選出にサプライズはなかった。大迫勇也と原口元気の選外が逆にサプライズだったわけだが、中山雄太の負傷で町野修斗が代わりに選出された。これはサプライズといっていいと思うが、さらに遠藤航が頭部を負傷。「重度の脳震とう」と報道されていて、症状しだいではワールドカップでプレーするのは無理かもしれない。そうなると遠藤の代わりに新たな選手を招集することになる。

　DF中山の代わりにFW町野の選出は意外だった。左SBとしてプレーしていた中山のポジションには伊藤洋輝と長友佑都がいるので、左SBの新たな選出は必要ないようにもみえるが、CBまたは右SBである冨安健洋は負傷が多く、筋肉系のトラブルなのでW杯の連戦に耐えられるかどうか不安がある。さらにCB板倉滉は負傷で長く戦列を離れていて、W杯はぶっつけに近い。右SBの酒井宏樹も負傷が多いタイプだ。人数は足りているようでいて、もし板倉、冨安のコンディションが万全でないなら伊藤がCBでプレーする可能性が高く、左SB長友のバックアップがいなくなる。中山の代わりは素直にDFでよかったのではないだろうか。

　さらに難しいのは遠藤の代役である。まだW杯でプレーできないと決まったわけではないが、「重度の脳震とう」が事実であれば復帰までに段階を踏んだ回復プログラムが必要になると思う。再度、脳に衝撃があると人命にかかわる場合もあるので、プレー可能かどうかの判断は慎重に行われるはずだ。コンディションの問題もあり、緒戦のドイツ戦には間に合わないことも想定される。

　現在のチームに不可欠な存在なだけに、もし遠藤が離脱となれば影響はかなり大きい。同じポジションには守田英正、田中碧、柴崎岳がいるが、仮に3人が先発した場合にはバックアップがいなくなる。中3日の連戦が続く中、メンバーを固定してグループリーグの3試合を戦うのは不可能なので、遠藤が無理ならばMFの補充はマストだ。

　今回、初の11月開幕のW杯となったため、直前まで各国のリーグが行われている。すでに日本代表では2人（冨安を含めれば3人）がリーグ戦で負傷していて、各国も負傷者を抱えている。回復までの時間も限られている。さらに大会後の欧州は過密日程となっているので、その影響も懸念されている。

　開催時期が変更されたのはカタールでの6月開幕が暑すぎて無理だったからだ。誰が考えてもわかりそうなことなのに、FIFAが「冷房スタジアムを作るので大丈夫だ」としてカタール開催を強行したことが発端である。開催国カタールの人権問題、差別問題も批判を浴びている。無理押しで道理を引っ込めたツケが回ってきた感がある。（西部謙司＝スポーツライター）