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【コラム】西部謙司

旭日旗とSS旗

[ 2017年5月6日 07:00 ]

ACLの川崎F―水原戦の試合後、スタンドでもみ合う両サポーター
Photo By 共同

 ACLの水原戦で川崎フロンターレのサポーターが旭日旗を掲げたことが、AFC規約に抵触する可能性が出てきている。おりしもガンバ大阪のサポーターがナチス親衛隊のSS旗と似たフラッグを掲示していたことも問題視されていた。

 旭日旗のほうは、AFC規約違反と判断されると、川崎Fに対して2試合の無観客試合と1万ドルの罰金が科される。SS類似旗に関してはJリーグがどのような処分にするかまだわかっていないが、浦和レッズのホームゲームで「JAPANESE ONLY 」のフラッグがコンコースに掲示されたときには無観客試合になっている。SS類似旗をどのような理由で掲示したのかを考慮しなければ、メッセージとしては「JAPANESE ONLY」よりむしろ程度は悪いかもしれない。

 Jリーグは浦和の問題が起きたとき、迅速に断固たる姿勢を示していた。ただ、無観客試合はやりすぎだったのではないかと思っている。

 差別に対しては断固たるNOをつきつけるべきだ。一方で、現実に根絶するのは非常に困難でもある。根絶が難しいからこそ断固としたNOが必要なわけだが、サッカーのスタジアムは社会の縮図のようなところがあって、必ずいろいろな「毒」が混入する。サポーター同士が互いを中傷、揶揄、挑発するのは日常茶飯事といっていい。 無菌状態にはならないし、そうすべきでもない。もちろん猛毒は排除しなければサッカー自体が死んでしまう。毒の許容範囲と程度を知らなければならない。

 浦和の件でJリーグの対応が厳しすぎたと思うのは、それでその手のものが根絶できるはずがないからだ。無観客試合でみせしめておけば、今後はもう出ないだろうと考えていたとしたら甘すぎる。ヨーロッパの試合を見ればわかるはずだ。もっと酷いものがたくさん出ているし、酷いチャントも繰り返されている。そのたびに無観客試合や降格処分ではサッカーが自滅してしまうだろう。

 AFCのほうは罰則規定が明確なので、旭日旗が規約違反にあたるかどうか。Jリーグでは旭日旗の掲示を禁止していない。ただ、対戦する相手によっては過 度の挑発になる可能性がある。国内試合でも、相手チームに韓国人選手がいれば無関係とはいえないだろう。SS旗については猛毒なので完全にアウト。

 ただ、旭日旗やSS旗が問題として取り上げられているうちはまだいいのだ。怖いのは「またか」という感じで無関心になってしまうことだろう。(西部謙司=スポーツライター)

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