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【コラム】西部謙司

対欧州と南米の戦績の差

[ 2023年9月15日 14:00 ]

日本に衝撃的な完敗を喫し、がっくりして引き揚げるドイツイレブン(AP)
Photo By AP

 欧州遠征はドイツ代表に4-1、トルコ代表に4-2。これで森保一監督が率いる日本代表の戦績は68試合45勝10分13敗となっている。

 対欧州は5勝1分と負けがない。唯一のドローはカタールワールドカップでクロアチア代表にPK戦で敗れた試合だけ(記録上は引き分けになる)。ドイツに2度勝利し、スペイン、セルビア、トルコに勝っている。6試合しかしていないのでサンプル数は少ないが欧州勢には滅法強い。

 対照的に南米にはあまり戦績が良くない。コロンビアに2度負け、ウルグアイには1勝2分、エクアドルに2分、ブラジル、チリ、ベネズエラに敗れている。5勝5分5敗。ホームゲームが多いことを考慮すると、南米勢はむしろ苦手といっていいかもしれない。カタールワールドカップ後も欧州には2勝、南米には1勝1分1敗である。

 対欧州と対南米の戦績の差は、おそらく日本の組織的な守備力の効果がどれだけあるではないかと思われる。

 今回のドイツ、トルコとの2試合、とくにドイツ戦は日本の堅守が際立っていた。コンパクトなゾーンディフェンスは機動力に富み、相手のパスワークを手詰まりにさせ、奪ってからのカウンターアタックに威力があった。森保監督がよく言う「良い守備からの良い攻撃」であり、日本の基調となる戦い方でもある。

 ところが、南米勢と対すると逆に守備ブロックに引っかかってカウンターされる、相手ボールになると簡単に奪えない、日本のやりたいプレーを逆にやられているという印象がある。カタールW杯後に敗れたコロンビア戦で、森保監督は「ダメージを与える展開がなかなかできなかった」「局面の強度をもっと間合いを詰めて上げなければならない」と話していた。日本の守備強度が上がらなかったのは日本の問題ではあるが、コロンビアのテクニックで上手くいなされていたところもあった。

 欧州勢の攻撃は比較的正直で読みやすい。また、日本が緻密な守備ブロックを形成すると無理に入ってこようともしない。欧州勢は守備ブロックを迂回して、外からのハイクロスでねじ込むのは得意だが、日本のGK、CBの高さへの耐性が出来てきたので、簡単にヘディングでやられるケースは少なくなった。一方、南米勢は一瞬の閃きやテクニックで日本の守備に穴を開けることができるので、日本の強みである守備力の効果をやや発揮しにくい相手なのかもしれない。

 対欧州勢無敗の日本への評価は上がっている。次回ワールドカップでのベスト8、ベスト4は現実的な目標になった。ただ、相手は欧州だけではなく、南米、北中米カリブ海、アフリカと、どこかで当たる可能性は高いわけで、とくに南米勢は鬼門のままだ。これまでのW杯で南米勢とは5回対戦しているが、勝てたのは開始早々に退場者を出して10人だったコロンビア(2018年)だけ。

 南米は守備ブロックに侵入するのが上手く、逆にブロック内に容易に入らせない。日本はこの壁をクリアしないと、ベスト8やベスト4への障壁がなくなったとはいえないだろう。(西部謙司=スポーツライター)

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