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【コラム】西部謙司

日本代表の「追試」

[ 2023年6月8日 13:00 ]

サッカー日本代表の公式スーツを身にまとい、笑顔を見せる森保監督(撮影・河野 光希)
Photo By スポニチ

 3月のウルグアイ、コロンビアとの試合に続き、日本代表はエクアドル、ペルーとの2試合を行う。今回の6月シリーズのテーマは3月の「追試」だ。(西部謙司=スポーツライター)

 カタールワールドカップを終えて、次の大会へ向けての課題の1つが「ボール保持」だった。ドイツ、スペインに勝ち、クロアチアに引き分け(PK負け)と良い結果を出した日本代表が、唯一敗れたのがコスタリカ戦。この試合は日本がボールを保持しながら0-1だった。守備中心の戦いでは負けなかったが、攻撃中心では負けている。そこで攻撃の強化という課題が浮上したわけだ。

 3月の2試合ではボール保持にチャレンジしたものの結果はあまり芳しくなく、今回は再チャレンジになる。

 現実的に次のワールドカップでも日本の戦い方は攻撃型にはならないと思う。日本よりボール保持力に優れた相手は多く、ベスト8を目指すなら日本がボールを支配するような展開は想定しにくい。相手にリードされたり、引かれたりした場合に、コスタリカ戦ようでは困るのでレベルアップはしたいわけだが、どんな相手にもボールを保持して戦うつもりはないだろう。

 とはいえ、攻撃力を上げなければいけないのは確か。3月シリーズでは「偽SB」を使ったビルドアップを採用していた。

 日本の攻撃は伊東純也、三笘薫のサイドアタックが最大の武器である。だから、SBをタッチラインに沿って高い位置に上げるビルドアップは得策ではない。それではウイングとポジションが重なってしまうか、伊東や三笘を中へ移動させることになるからだ。SBをボランチ化させる「偽SB」は形としては妥当といえる。それが上手くいかなかったのは選手の特徴と役割があまり合っていなかったからだ。SBに起用された菅原由勢とバングーナガンデ佳史扶はボランチと兼任するよりタッチラインを上下動するタイプ。伊藤洋輝はボランチ適性があるが、どちらかといえばCBである。

 今回も偽SB適性のある選手はDFの中にはいない。ただ、MFの旗手怜央は偽SB向きだ。守田英正もできる。2人をSBに起用すれば「偽SB」は機能するかもしれない。

 ウイングを張らせるためのビルドアップは「偽SB」だけではない。マンチェスター・シティが採用している「偽CB」もある。欧州でもこれをやっているのはシティぐらいだが、実は日本代表には適性のあるCBがけっこういる。今回は選外だが昨年のJ1MVPの岩田智輝はCBとボランチの兼任という意味ではうってつけ。谷口彰悟、板倉滉、伊藤洋輝もボランチの経験がある。「偽CB」のSBは低い位置に留まるので、守備力優先で相手の強力なウイングを封じ込むための人選も可能だ。

 ただ、今回は「偽CB」をやるにはバックアップを選んでいないので、おそらくこれをやるつもりはないのだろう。

 3月に積み残したビルドアップを改善できるかどうかは、6月の2試合ではテーマの1つとしてあげられる。(西部謙司=スポーツライター)

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