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【コラム】西部謙司

五輪とW杯の終わりのはじまり?

[ 2020年4月1日 19:00 ]

 新型コロナウイルスのパンデミックによって、サッカー界も先の見えない状態になっている。各国リーグはほとんどが中断したまま、ユーロとコパ・アメリカは1年間の延期となり、カタールW杯予選も延期されている。

 そんな中、FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長はカタールW杯をすべてノックアウト方式で行うことを検討すると表明した。従来のグループリーグを行わず、最初から32チームのノックアウト方式とすることで、「より拮抗した面白いものにしたい」と述べている。開催時期が11~12月と、本来ならヨーロッパのリーグ戦の最中ということもあり、開催日程を短縮する狙いもあるのだろう。また、カタール大会の次から規模を拡大した48カ国開催になることから、そのための布石という意味もあるかもしれない。

 もし、本当にW杯がトーナメント方式のみになるなら、盛り上がるどころか興ざめになると思う。少なくとも2年をかけた予選を勝ち抜いての本大会が、たった1試合で終わるチームが16もあるのだ。24チームが最大2試合しかプレーしない。2試合が終わった時点で、ベスト8に残った国以外はW杯への興味を失うだろう。もちろん自国以外の試合にも注目するファンは世界中にいるが、全体的な興味は薄れていく。

 仮に、ブラジル、ドイツ、イングランド、スペイン、イタリア、アルゼンチンが軒並み1回戦で敗退でもしたら、全く盛り上がらない大会になりそうだ。

 東京五輪の男子サッカーはU-23ではなくU-24になると思う。だが、ほぼ同時期にユーロとコパ・アメリカがある以上、ヨーロッパと南米は五輪に有力選手を送らない。U-24となれば、A代表に組み込む年齢でもある。U-23でも微妙だったが、U-24となればもう育成年代ではない。この年齢カテゴリーの世界大会を行う意味があるとは思えない。東京五輪へのサッカー界の関心は高くならないのではないか。

 開催国の日本は、ベストメンバーを組めばメダルのチャンスは十分あるだろう。だが、そのメダルにどれだけの価値があるだろうか。FIFA管轄下の日本協会は当然W杯を優先するはず。森保監督の兼任も解き、五輪代表はA代表から切り離すタイミングだろう。

 そもそも東京五輪が無事開催できる保証もない。専門家の話でも集団免疫獲得には国民の60~80%が感染している必要があるそうだから、日本の場合は8000万人ぐらいが罹患ずみという計算になる。あと1年でこんな数が感染したら、確実に医療崩壊しているだろうから五輪どころではない。つまり、終息にはワクチンか特効薬を待つことになるが、来年7月に間に合う保証は今のところないわけだ。

 加えて、東京五輪とカタールW杯には不正の噂がつきまとってきた。W杯関連ではすでに複数の逮捕者も出ている。スポーツを利用した巨大利権構造には皆とっくに気づいている。そのうえ大会自体が低調では愛想も尽きようというもの。感染症の蔓延という不可抗力がきっかけとはいえ、ここらが潮時なのかもしれない。(西部謙司=スポーツライター)

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