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【コラム】海外通信員

ミラン 大幅に変わる可能性も…

[ 2016年7月1日 05:30 ]

本田圭佑の去就は?
Photo By AP

 サッカー界の注目は欧州選手権やコパ・アメリカに移る中、本田圭佑の所属するミランは身売り交渉に応じていた。中国人投資家集団の意向に従い、イタリア系アメリカ人のスポーツ経営コンサルタントが買収交渉にあたる。そのさなか、シルビオ・ベルルスコーニ名誉会長が心臓の疾患で手術を受けて入院してしまったため、交渉は進んでおらず監督も決められなかった(28日、クラブはようやくビンチェンツォ・モンテッラ監督の就任を発表する)。誰を補強するか、誰を放出するかという動きも、正直ほとんど進んでいない。

 そんな中、24日に突然ニュースが流れた。「ミランがラパドゥーラを獲得する」。今季セリエBペスカーラでプレーし、27ゴールを奪ってチームをA昇格に導いたエースストライカー、ジャンルカ・ラパドゥーラのことだ。

 現在26歳、イタリア人の父親とペルー人の母親との間に生まれたトリノ出身の若者は、ユベントスの下部組織で育てられる。そこからケガに悩まされプロとして伸び悩む時期を経験したが、徐々にゴールセンスが開花。2011~12シーズンでは、サンマリノに所属し4部で得点王になる。13~14シーズンはスロベニア1部のNDゴリツァでカップ戦の優勝に貢献、そしてイタリアに戻った14~15シーズンも、テーラモで21ゴールを奪いチームのB昇格に貢献した(ただしその後八百長関与の処分で昇格取り消し)。そして今シーズンはセリエBでも得点量産と、やや遅咲きながらも急成長中である。

 ペルー人のDNAを引き継いでいるため、ペルーサッカー協会からのコンタクトを受け、コパ・アメリカへの参加も要請されたが、これを断って昇格プレーオフに挑んだ。そして4位試合で3ゴールと、無類の勝負強さを見せつけてペスカーラのセリエA昇格に貢献した。そんな彼についてペスカーラのマッシモ・オッド監督は「裏抜けのスピードに加え、一瞬のうちに状況を判断できる高い戦術眼がある」という理由で「クローゼに似ている」と紹介していた。ただ、プレースタイルそのものは、もう少し野性味が強い。卓越したスピードとボディバランスがあり、前線で豊富に動いて体を張ってボールをつなぎながら、ゴール前に飛び出す。パスやポストプレーもうまく、ゴール前以外のエリアでも仕事ができる。もちろん、ストライカーとして肝心な得点力そのものも高い。繊細な左足のタッチでDFを一瞬で置き去りにしたあと、シャープなシュートをたたき込む。利き足でない右のシュートの正確で、頭でも点が取れる。

 オッド監督はラパドゥーラについて「セリエAで通用するどころか、ビッグクラブのFWとして十分やっていける力がある」といい、実際に強豪のナポリも獲得に動いていた。そしてほとんど報道に名が出ていなかったミランが獲得に成功したが、彼らが手を出した理由というのは一見解りにくい。ゴールエリアを主戦場とするCFはすでにカルロス・バッカがおり、プレーエリアがかぶるタイプとしてルイス・アドリアーノもいる。ウイングなどのポジションもできるとはいえ、真っ先に補強すべきポジションは他にあるのでは印象もする。

 だが、他ならぬバッカ自身の去就が微妙で、「コパ・アメリカが終わったらクラブと話し合う」と語っていた。マリオ・バロテッリはすでにリバプールへ返却され、ジェレミー・メネズも移籍の意思を示しているとされている。その代わりに柱として据えようとしているのがラパドゥーラということなのだろう。来季、ミランの顔ぶれは大幅に変わる可能性があるのだが、強化は遅々として進まない。中途半端な形で開幕を迎える可能性も低くはないと見るが。(神尾光臣=イタリア通信員)

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